未来への視座を上げる/202606

未来が、知りたい。

"We are currently preparing students for jobs that don't yet exist.
using technologies that haven't been invented.
in order to solve problems we don't even know are problems yet."

『未だ発明されていない技術を用いて
今は問題であることすら知りえない問題を解決するための、
未だ存在しない職業に向けて、
我々は今、生徒たちを教育している。』

加速し続けていく変化。
爆発的に増え続けていく情報。



「未来を知る」ために、5月から、こういう本を読んでいきたい。

・21世紀の歴史
・出現する未来
・フラット化する世界<上>
・フラット化する世界<下>
・グリーン革命<上>
・グリーン革命<下>
・富の未来<上>
・富の未来<下>
・ネクスト・ソサエティ
・明日を支配するもの
・すでに起こった未来
・チェンジ・リーダーの条件
・イノベーターの条件
・テクノロジストの条件
・クリエイティブ資本論
・無形化世界の力学と戦略<上>
・無形化世界の力学と戦略<下>
・ザ・ビジョン
・ビジョナリーカンパニー?
・国をつくるという仕事
・未来を予見する5つの法則
・暗いやつは暗く生きろ
・二十世紀の忘れもの
・ニュー・アース
・セクシー・プロジェクトで差をつけろ!
・ハイ・コンセプト
・ハイエスト・ゴール
・貧困のない世界を創る
・人間性の心理学
・立命の書「陰隲録」を読む
・修己治人の学 『大学』を読む
・意識と本質―精神的東洋を索めて

しかし、大切なのは情報収集の前に考えることである。
まずは、目標を明確にしよう。

大きな目標は、
「今は問題であることすら知りえない問題を解決する」スキルや考え方を特定することである。
・未来はどうなるのか
・その未来に向けてどんな準備をすればいいか
を特定すれば、何らかの示唆が出せそうだ。


まとめると、

  • 私は、未来の何を知りたいか?
    • 未来の社会・未来の経済はどうなるか?
      • 未来の社会を左右する大きな要因(プレイヤー)は何か?
      • 今あるもので、無くなるものは何か?
    • そんな未来を生き抜くのに必要な力は何か
      • 個人としての力
      • 組織の中の個人としての力

こういった事を、探っていきたい。

フォーラムを終えて

僕がお二人の中に視たものは、この3つ。

・障害者に限らず人が価値を産み出せるように、頭を使うこと。それが経営者の仕事であること。
・そして、障害者雇用というお涙頂戴物語にするのではなく、きちんと価値を生み出すこと。
・価値を産んで、人の役に立つことこそが、幸せであること。

私は、誰のお役に立てるだろうか。
私は、誰のお役に立ち続けられるだろうか。
私は、この生涯を通して、どれほど他者に貢献できるだろうか。
深くふかく、考えていきたい。

大山泰弘氏 日本理化学工業 株式会社 会長

キットパス http://www.kitpas.com/shop/
ダストレスチョーク
などで有名な、日本理化学工業の大山会長のお話を伺いました!

チョークをダストレスに
炭酸カルシウム 大正12年

知的障害者雇用の経緯
川崎と北海道。二つの工場で、従業員の7割が知的障害者
なぜ知的障害者を大勢雇用して、工場をやっているのか?

◆受け入れ
青鳥学園という養護学校から訪問があり、
15歳の知的障害者(精神薄弱児と呼ばれていた)を受け入れて欲しいという話があった。
先生のお話を聞いていて、「精神的におかしい人」なんてとんでもない、と
門前払いをしてしまった。
先生は2度、3度と来られ、
「来年の三月、就職できなければ、親と離れ離れになって、
働くという事を知らず、一生施設に送ってしまう事になるので、
せめて、働く経験だけでもさせてください」
と言われ、心が動きました。

そうして、では、2週間だけですよ、と期限を切って、
1人じゃかわいそうだから、2人、受け入れました。


34年の秋のことだったと思います。
その受け入れた2週間の後、その2人をうちに就職させました。
その理由は、2週間を通して、二人がとても、一生懸命だったから。
毎日二人とも、昼食のベルが鳴っても、
従業員が声をかけるまで、一生懸命仕事をしていた。

工場には中年の女性が多かったので、
「私たちの娘みたいなものじゃないか。
私たちが面倒をみるから、専務さん、就職させてやってくれませんかね」
と言われ、2人を就職させた。

次の年も、学校の先生が来られ、障害者を受け入れ、
4人、5人と増えていった。

◆転機
そのころ、ある会でお寺のご住職が隣に座られた。
「ご住職、うちには何人か、文字も数も読めない子たちが仕事を頑張ってくれている。
僕の考えからすると、仕事ができないなら、施設にいた方が幸せのように思うのに、
なぜこの子たちが満員電車に揺られながら、毎日遅れもせずに来られるのでしょうか
さっぱり、わからないのです」
と相談した。

住職は
「ものやお金があれば幸せだと思いますか」
と逆に質問をされた。
「人間の究極の幸せは4つです
愛されること
ほめられること
役に立つこと
必要とされること

愛されるのはともかくも、施設で褒められたり、役に立ったりしようとされますか?
それが企業であってこそ、叶えられることですよ。

施設が人を幸せにするのではなく、企業が人間を幸せにするんですよ。」

そういう
「企業が人間を幸せにするんですよ」
というご住職の言葉を聞き“企業を頑張ろうか”と思った。


◆国の制度と共に
昭和48年、国が重度障害者多数雇用モデル工場の制度をはじめた
一つの企業で50%の障害者を雇用し、その半分が重度の工場を作れば
国が融資をしてくれ、20年で償還してもらえる制度を作った。

当時、身体障害者の雇用は多くあったが、知的障害者の雇用はあまりなかった。
その制度ができる前にも、
知的障害者を雇用しているということで、
労働省から大臣が視察に来られたという繋がりもあり、
知的障害者のモデル工場にならないか、といわれた。

当時、ある事のヒントもあり、そのモデル制度に乗った
ある事のヒントとは、こういうことです。


◆相手の立場に立つ
これまでは、普通の人ができることを知的障害者に教え込んで、
できるまでやらせる、という事をやっていた。

そうではなく、「彼らが実際にできることはどういう事かな?」と考えた。
彼らが家を出て、会社に来る所を思い浮かべると、
通勤中、電車に乗る。
ということは、こういう形式のところで定期を使って乗り換える、ということはできるはずだ。
また、会社の最寄駅の改札を出てから会社に来るまで、四つ角をいくつもクリアする。
そうすると、それが付き添いもなくできるということは、
交通信号の識別ができる。赤で止まる。青で進むの区別がつく。
つまり、いくら字が読めない子たちでも、
事故も起こさず会社に来れるという事は、赤青の識別はできるはずだ。
彼らのわかる理解力の中で仕事の段取りをなんとかできないだろうか、
というのがヒントでした。


普通のチョークでしたら石膏と水を流し込めば固まりますが、
炭酸カルシウムでは押し出し成形をするのでそれだけでは固まらない。
固めるための材料の名前を覚えたり、袋から読んで何の材料かを読まないといけない
秤なんていうものも、何グラムというメモリを読まなくてはいけない。

そこで、交通信号をヒントに、Aという材料を赤に塗りました。
必要な量も、秤のメモリではなく、必要量の錘を赤く塗っておきました。
天秤が上にも下にもいかなければ、下ろす。

つまり、
赤い材料には赤い錘を、
青い材料には青い錘を、というようにすれば。
彼らの理解力の中でちゃんとできるような段取りをしてあげれば、
彼らはちゃんとやってくれる。

他にも、
時間で稼働する練りの作業は、砂時計でやります。
時計は読めなくても、砂が全部落ちたら止める、ということはできる。
こういった事をすれば、時計は読めなくても、時間通りの作業ができる。

我々の商品であるチョークはJIS規格の指定商品だから、
ばらつきが大きいといけません。
しかし、そういった検品作業も知的障害者がやっています。

実に、製造ラインは、1人の健常者が、12〜13人の知的障害者と共に仕事をしている状況です。

彼らに合わせた作業の段取りを作り、
彼らに横で親切にわかりやすく教える班長を置き、全体を構成する。


中間の製品検査も彼らがおこなう。
例えば、チョークの太さ±何ミリという検査は、普通ならノギスで直径を測る。
しかし、ノギスは複雑な物差しみたいなものだから、使えない。
そこで、チョークが±何ミリをの範囲でいくつでないといけないか、ではなく、
太い検査の穴、細い検査の穴を用意して、その両方をクリアすれば、チェックを行うことができる。


知的障害者はともすると、一つの仕事も落ち着いてできない、と言われるが
「こうしなさい」と言われても、
自分がその通りにできているかできていないか、不安で、
不安だから、集中してできない。

けれど、自分の理解力の中の作業であれば、必要以上の神経を使わず安心してできる。
だから彼らは、真剣に飽きずに、安心して取り組む。


よく見学に来られた方が「あんな単純な仕事を良く飽きずにできますね」と言うが、
逆なのだと考えています。

彼らの理解力の範囲で段取りを決めてあげれば、
彼らはむしろその中で、集中して生産的に働いてくれる。

おかげ様で、チョークのシェアでは北海道から沖縄まで、20%を維持しています。


◆「チョークみたいに単純だから知的障害者」ではない!
昭和50年モデル工場を作ったとき、
「チョークだから知的障害者は大勢来る」と周りは言う。
つまり、やっぱり知的障害者のレベルはそのくらい(簡単なチョークづくり作業ができるくらい)だ、と思われてしまう。

実は、「チョークだから」「チョークだけ」ではありません。
昭和50年、パイオニアさんの松本社長とともに、
当時、世界の最先端を行っていたパイオニアさんの
カセットの成形まで組み立てる事ができた。
知的障害者の工場で、カセットを1日1万個作った。
「チョークだからできる」のではない。


彼らは言語は分からないが、識別はできる。
成形機から出てきたものの仕訳ができる。
何もないものが良品。
何かあるものが悪品。
悪品と仕訳したものを職員がさらに見て、基準内のものは良品へ追加。
というような事をやった。


また、カセットが5つの部品を手元に用意して、それをベルトコンベアの流れてきたケースの上におくのが普通の工場の作業で、健常者は1500ほどを一日にできたようですが。
うちの(知的障害者の)従業員はさすがに、この作業は200〜300個が限界でした

けれど、それを、5つの部品を1人でやっていたのを、
1つの部品を1人にして、5人で完成するようにすれば、
一日5人で5000個できた。

全てではないが、大分そういった恩恵を受けながら(パイオニアとの協働が)できた。

障害者雇用、3重の社会貢献
昭和35年からすれば50年近く経っているけれども
私は本当にラッキーなことに
障害者と関わっていたことで、
企業をやるとともに、福祉の先生や学校の先生と関係が持て、
企業に居ながら福祉の世界の情報がキャッチできるという立場に居られた。

そんな立場から見て思うのは、
重度の障害者を雇用するのは一石三鳥の社会貢献だなと思い、気が付き、教えられた。
・障害者も会社で働ければ、まず間違いなく幸せになれる。
・本来なら施設に入る人を企業で活用できれば、少子高齢化の中、間違いなく労働力を確保できる。
・20〜定年60歳。まるまる40年。ずっと施設にいると、40年で2億。一年で500万円掛かる。それが、50年やっていると。うちにはそういう人が3人居るが、それだけでも3人×2億の社会福祉費の節約ができる。

今まであまり気付かなかったけれど、小さい会社でも、それだけの大きな社会貢献ができる。

確かにこれまでは障害者を雇用しているということで、色々と賞なども頂いたが、
この間、経済の象徴的な渋沢栄一賞を頂いた。
ちっぽけな中小企業の社長であっても、経済界の一角を占めるような賞を頂くような貢献ができた。
これは、今後の中小企業にとっても、大きな励みになる。
そういう意味でも、今後も障害者雇用について、頑張っていきたい。
ここまで来れたのも、一生懸命な障害者のお陰であると思っています。
それだけに、この幸せな人生を歩ませて頂いたことについて、
彼らに感謝しないといけない。

段取りさえしっかりすれば、きちんと働けるということを伝えていきたいと思います。
どうも、ありがとうございました。

ISL社会イノベーターフォーラム/201512

ISL主催の、社会イノベーターフォーラムに参加しました。
社会包摂(Social Inclusion)::平たく言えば、disables and not disablesの共生がテーマでした。
非常に濃い3時間を過ごせました。

以下は、ほぼリアルタイムでとった、お二人の講演内容です。
(お二人の言われた内容を完璧にとったものではありません。)

東京大学で学んだ、卒論研究の進め方 /184870

(参考:ロジカルシンキングことはじめ こちらでも、論理的に思考する方法について記載しています)

◆はじめに

この記事は、これから「研究者のたまご」への第一歩を踏み出す研究者志望者に、4年生で、とりあえず研究室に配属されたは良いが、一体どうしたものか、と悩むあなたに、そして、大学の研究ってどんなもの?とその一端を垣間見たい、大学受験生へ向けた記事です。

これは、東京大学工学部の、ソフトウェア系研究室での実例と、そこから抽出したエッセンスです。従って、この記事は個別の体験で、あなたの個別の研究室体験とは、幾分と違うものとなるでしょう。取捨選択と、自分なりのカスタマイズを行うための材料として、お使いください。

「何かを学びたければ、すべてを学ぼうとしてはならない」

  • ◇どんな人が書いているのか

この3月に、東京大学工学部システム創成学科知能設計コース、という長〜い名前のコースを「幸運にも」首席で出る事ができた新修士一年生です。

幸運にも、というのは、決して自分の実力だけでなく、助けて下さった先生・先輩方、切磋琢磨できた友人、そして、後に詳しく述べますが、失敗を成功へと転化できた天佑によるものです。

先生方、先輩方からは、頂くばかりでしたが、可能ならこの記事でほんの少しの恩返しを後進へ。そして、修士でまた論文を書く自分自身への、備忘録へ。


◆卒業研究の全体像
卒業研究はどのように進むのか、卒業研究の全体像を把握しておきましょう。全体を把握してから部分へと降りていくのは、論文を書くときにも基本です。

  • ◇関連知識の勉強

研究室に配属されて、はじめの数ヶ月は、研究ではなく、「勉強」をすることになると思います。基本は研究会と呼ばれる、週1〜月1程度に集まって、学生や講師が報告する研究の進捗状況を聞きながら学んだり、教授や講師にお勧めされる論文を読んだり、教科書的なものや、その分野の優れた論文を読む輪講・輪読会に参加したり、先生が開催してくれる勉強会などに参加して、関連知を増やしていくことになります。

しかし、何より最優先で行うべきは、恐らく、「先輩の卒論・修論」を読む。です。
私は卒論を書きながら、その効用に気づいたのですが、卒論や修論の中の「関連研究」の項では、非常に分かりやすく、噛み砕かれた形で関連分野の教科書的知識が(教科書よりも)整理されている事が多くあります。僕が修士に上がったら、恐らく最初にやるのがこれです。

  • ◇テーマ(問題)の定義

学部生には、恐らく、先生の方からテーマをくれます。

「こんな事がいま、企業で問題になっているんだけど、取り組んでみない?」とか、
「こういうテーマとこういうテーマがあるんだけど、どっちかやってみない?」とか、
「この研究室の解きたい課題のゴールはこれで、このテーマをやると、この部分のピースが埋まる」とか。

この時は質問のチャンスですから、たくさん、先生に質問をしておきましょう。(博士などに進めば、こういうのも全て自分でやらないといけないのでしょうが・・・)

・何がどこまで出来ればゴールなのか。
・その課題を解いて、誰が幸せになるのか。
・どういうスタンスで研究を進めればよいのか。
・新規性(=論文としての価値)はどこにあるのか。
・どのくらいで、どうすれば結果が出そうな気がしているのか。

こういう事を聞いていくと、良いと思います。

中でも、「ゴールはどこか」という質問は非常に重要で、僕の論文が受賞に至ったのも、明確に問題を定義し、それを解くために必要な2つの小問題も明確に定義し、2つの問題それぞれについて、緻密に回答をしていき、ゴール達成の評価軸にそって、きちんと評価・考察を行った、という部分の寄与する処は大きかったです。

  • ◇思考・試行錯誤・実験・コーディング

次に、具体的にどのようにゴールに到達するか思考し、実験を行ったり、プログラムを書いたりと、試行錯誤を行うことになるでしょう。また後に触れますが、このとき「まず思考する」という事が、非常に、非常に、大切になります。

  • ◇論文執筆

そのような仮説と検証、思考と実行がひと段落すれば、いよいよ論文の執筆です。
(研究者によっては、はじめから論文を書け!なんていうことを言う人も居るそうですが、)東京大学工学部では、大体、12月の終わりくらいから書き始めるようです。私は教授に「筆力、ある?」と聞かれ「あります!」と答えたので、1月の2週あたりまで研究を続け、論文に取り掛かりました。そこから2月の上旬の締切まで、6万字、100ページOverの論文を書きつつ、論文を書いてはじめて分かってきたことをまとめたり、論文を書くためにプログラムを書いたり(出た結果を奇麗に見せるためのプログラムとか)しました。

  • ◇発表

10月の終わりに中間発表、2月中旬に卒論発表会がありました。

東大工学部の文化では

・主査(指導教官)は発表を黙って見ている。
・副査(論文をきちんと読む人)がメインで質問する。
・その他教授陣が、発表を聞いて感じた事を質問する。

審査員は一人6点の点数を持っており、普通の出来栄えであれば、3〜4点をつける。その審査員の平均得点が0.5点以上なら可。2.5点以上なら優という、大変ヌルーイ構成となっており「東大の卒論、出せば優」というのは一つの真実のようです。(ただ、逆に優でなければ研究者の道はリアルに諦めた方がいいみたいですw)


それでは、これら研究生活

◇関連知識の勉強
◇テーマ(問題)の定義
◇思考・試行錯誤・実験・コーディング
◇論文執筆
◇発表

の5つについて概要を俯瞰しましたが、研究生活の中で特に大切だと感じる、『仮説からのスタート』『アウトプットの出し方』この2つについて詳しく見ていきましょう!


◆仮説からスタートする
先ほど「まず思考する」ことが、非常に、非常に大切になる、と書きました。
ちょっと例を見てみましょう。

僕は実は、研究室を最初の半年くらいはサボりがちで、研究室には週1回の研究会にしか行きませんでした。そんなわけで、プログラミングを習得するのが、同期の友人たちより遅かったのです。ですが、彼らと同じような周期で、「研究会発表」の順番は回ってきます。研究会発表の時に、「成果はありません」などとは言えない。しかし、プログラミングの習得が遅く、実際の成果物を出すことはできない。

そこで、プログラムを書くことではなく、頭を使うことにしました。
問題の詳しい定義、アプローチ手法の考案、アプローチ手法を適応したらどうなるかという展望、こういった事を考え「このようにすればうまくいくのではないか」という、いわば「理論」を全面に、研究会を乗り切りました。プログラミングして出した結果を使って、途中経過を報告している同期を尻目に。

今から思えば、これが良かった。

実際にやってみる前に、きちんと仮説を立てることができた。私が実際にプログラミングをする頃には、「何を書いて」「どんな結果を出せばいいのか」「どんな事実があれば、仮説が証明できるか」「どんなメッセージが、研究として価値あるメッセージになるか」こういった事をある程度きっちり考えた上で、実際の研究を進める事ができました。

初めに、「こうなるだろう」という仮説があれば、その証明に要するデータを絞り込む事ができます。もし、証明に要するデータが、仮説と異なれば、驚きと共に、理由を考える事ができます。理由を考えれば、仮説を修正する事ができます。そうやって、仮説とその検証を行って、うまく仮説が証明された時には、それは「意味のあるメッセージ」として、プレゼンしたり、論文に書いたりできるメッセージになっています。

やってみる、前にきちんと考える(悩むのでも、考え込むのでもなく)

ということを、偶然にも実践することができ、大変助かりました。

進捗を細かく管理するのではなく、僕を「なんとかなるでしょ」と信頼し、ある程度放任してくださった。そして、語り口は柔らかな人格者で、結果に対する高い水準の要求はして下さった、指導教官のお陰でもあります。


◆アウトプット

  • ◇構造化する

論文を書くのにも、論文発表のスライドを作るにも、あるいは、研究会用にちょっとした資料を作るのでも、まず書き始めるのはあまりお勧めできません。あらかじめ「構造化」をする事で、うまく行くことが多いです。構造化とは、簡単に言えば「目次から書く。」「構成から考える。」という事です。この文章も書き始める前に、◆と◇のついている「項目」を最初に挙げ、その上でその内部を埋めていくように構造化してから書いています。

たとえば目次だけ見ても、

研究の進め方
◆はじめに
◇どんな人が書いているのか

◆卒業研究の全体像
◇関連知識の勉強
◇テーマ(問題)の定義
◇思考・試行錯誤・実験・コーディング
◇論文執筆
◇発表

◆仮説からスタートする
◇データの収集にはいらない
◇欲しいデータを特定する。

◆アウトプット
◇構造化する
◇見た目

ある程度流れや中身が分かるように書いています。「いきなり取りかかるのではなく、まず思考する(仮説を立てる)」のが大切だ、という話をしましたが、それは、文章を書くときも同じだ、という事です。

  • ◇見た目

次に、「見た目」が結構大事です。見た目というのは、派手とか美的センスがあるということではなく、

・可能な限り単純化され、分かりやすくされた図になっている。
・結果画像などの、重要な処は強調されている。
・同じもの、同様のカテゴリは、同一系統色で分かりやすくなっている。
・変なノイズや、無駄な色が無い。

といった「見た目」を指します。

恐らく多くの研究室では、Adobe Illustratorをはじめ、そういった作図用のツールがあるはずですので、早めに習熟しておくと便利です。(TeXというもので論文を書くことが多いと思いますので、IllustratorTeXとの相性も良く、お勧めです。)

  • ◇死ぬほど練習する

構造化して、見た目に気を使って、論文を作り、プレゼン資料を完成させたら、それで終わりではありません。プレゼンに向け、死ぬほど練習をしましょう。

僕が普段やる練習は以下の通りです。

・スライド毎に、原稿を書きだす。
・原稿を何度か声に出して読む。
・引っかかる処は喋りにくく、繋がりの悪い所なので修正する。
・スライドを見ながらで良いので、原稿をスラスラ言えるようになるまで暗記する。
・時間の許す限り、重要ポイントの抑揚、制限時間の遵守、声の大きさなどを調整しながら練習し続ける。

これだけです。大変ですが、やればやるほど報われます。

発表を終え、授業でお世話になった先生に会い、そうしてにこやかにほほ笑んで「見事だったね」と言ってくださった時の、達成感やいかに。


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併せて読みたい:


論理的に考えるとはどういうことか|ロジカルシンキングことはじめ

よい仕事をするために

あざやかに生きる

学生のためのスキルアップ入門

最近の思考メモ/183434

最近、意識しているのは、

「自分主体の学び」ということだ。


教材や、先生や、友人や、外部環境のせいにせず、
それこそ女性誌だろうが、少女漫画だろうが、自分の教師になりうるものを見付け、そこから何かを学びとる。



そのためには、おそらく「良い問い」というものが必要なのだ。

問題を発見すること。正しく問いなおすこと。大事なことを問うこと。本質的でない問いを無視すること。


解決法や、解決のためのアプローチは、もちろん大切だが、それよりも、正しく問いを立てるほうが、何倍も重要で、かつ難しく、その実りは大きい。



それが、自分にとって正しい問いであるためには、自分を知らなければいけない。
しかし、自分を知ることはそう容易くはない。
自分を探すよりは、自分を決めてしまった方がいい。
たった一つの自分なんてないかもしれず、それに人なんて変わりやすいものだ。

たぶんこれだ、と、信憑性のある仮説をたてて、そういう自分を構築する。

だからぼくは、ほんとうのじぶん、なんてものは良く分からないが、

「強みはモデル化(抽象化・対象からの問題抽出)とプロセスデザイン(具体化・実行支援)です」
といった事を言い続ける。
言い続ける強みが抽象的なところに、未だ「アオイトリ症候群」の匂いもするが、
それはたぶん、「自分を決めきれない」という甘え、あるいは学者的な「普遍性への渇望」のようなものがあるのだろう。

そういった事を考えている。


それと同時に
「プロセスデザイン」をもう一歩すすめられないか、と考えている。

具体的には、テキストなどの教材を創ったときの、実行率をあげたい。
すぐれた書籍は多いが、それが人をなにかに駆り立て、ある程度長期的なトレーニングというべきものに誘う本は少ない。

しかし、そういった文章がかけるようにならなければ、
プロセス化した、「スキル」を誰かに身につけて貰うのは厳しい。


たくさんのメリットを述べたてて煽る、というのは短期的にしか使えないように見える。

むしろ、
「面白そうかも」
「やってみてもいいかも」
といった、
読み手が自分自身に許可を与えられるようなアプローチで、なにかできないか、と思索している。

モデル化の前提条件/179645

卒論の,訂正稿を書いている.締め切りが近い.
ここのところ,既に書いた"モデル"をより良いものにしようと試行錯誤をしている.

科学の方法には,2種類ある.解析的方法と,統計的方法だ.僕が相手にしているのは,前者の解析的方法で,これには,モデル化というものが必要だ.

モデル化というのは,単純化の事だ.無視できるような関係性を,きちんとした定義や閾値の元に無視を行い,その本質を抽出する.例えば,力学に置いて3体(以上の)問題は,初期条件に敏感に反応するカオスな結果になる事が知られているが,太陽からの影響が格段に強い.従って,その他の惑星間の影響は無視してよい,などの仮定とモデル化を行う事で,天文学は大いなる勝利を納めた.

モデル化には,その「太陽からの影響が格段に強い」といような前提条件.いわば,単純化のための根拠がある.(逆もまた真:つまり,とにかく単純化した結果がうまく現実に合うので,なぜそうなるか根拠を探しに行くこともある.)


僕がいま相手にしているモデルは

  • より滑らかに:滑らかでノイズに強いけど不正確な近似
  • より正確に:正確に近似できるけど、ノイズに弱い

というトレードオフがあって,

その、滑らかさと正確さを"最適化"する必要がある.

まずは,実際のデータで色々と値を変えて試してみて,「思考-試行」する.
実際のデータでどうなるか,という傾向を掴んだら,一般的な最適条件を求めたくなる.

最適化の為には色々な方法があるけれど,ある時は机上の空論だけじゃどうしようもなくて,限定条件下・理想条件下での最適解を実際に色々試してみて,コンピュータの計算力でもって,エイヤッ!と,最適値らしきものを計算する.

この時,実物をずっと見ていて,予想できなかった事が起こったりする.よく考えれば,理想化において,モデルの前提条件が覆っていたりする(例えば,ノイズの無い綺麗なデータを元に,試行した).それを入れ込めば,当たり前にそうなる事でも,前提の差異に気付かずに,悩んでしまったりする.それは,実際のデータに慣れすぎていて,"大切な誤差"が捨象されている.そこの所にすぐ気付けない事があるからだ.


というのも,前提というのは,往々にして隠れがちだからだ.
前提をくどくどと説明するのは,非常に骨が折れる.
そして,モデル化・理想化して物事を考えるときに,ときに前提が捨象されている,ということに気付かない事がある.
そして,前提をむしろ,積極的に変える事で新しい知識が創造できるように思った.


たとえば,
人の感覚的なもの、定性的なものを
あえて定義してみる.
幅を持たせて数値化してみる.

ノイズを積極的に消した綺麗なデータを用い,実物との差を測る.
常識的なものではなく,異常値に注目する.