オンライン「ならでは」の、効果的な学びの場を設計する

今回は、noteに書いてみました。

下記のリンク先からどうぞ!

 

目次

  • 学びの場の分類
  • エンゲージメントがすべての前提
  • 視聴者と接続する
  • オンラインで意味ある学びの場をつくるために
  • オンラインで「複数回の講義・レクチャー」を設計する
  • 「真実の瞬間」をもたらす 
  • 終わりに

 

note.com

日経クロストレンドに「心理的安全性」で登壇します(10/9 16時30分)

【日経に登壇します!】
来週、10月9日の夕方から、日経クロストレンドEXPOに登壇します!
(東京ビッグサイトです)

 

この一年ほど、数百というチームの心理的安全性を計測し、分析してきました。
また、心理的安全性を構築する方法(そして破壊する方法!)についても、
研究・開発し、多くの組織マネジャーに実際に試して頂きました。

 

そのひとつの集大成として、来週のこの場で、お伝えしていくつもりです。

心理的安全性って、そもそもいったい何?ほんとにチームに重要?」
「どうしたらそれが作れるの?方針だけでも知りたい!」
心理的安全なチームがイノベーションに繋がる具体的なケースないの?」

という疑問のある方、その答えを1時間に圧縮して、10月9日、お届けします!
(上場企業社長も務められた島津さんと、一緒に登壇します。
大企業の中でつくった、大規模なイノベーション事例についても、紹介頂く予定です)

 

いま、こちらから登録いただくと、3,000円の入場料が無料になります。

日経 xTREND EXPO TOKYO 2019 | 日経クロストレンド エクスポ 東京 2019

 

 講座まで待てない、という人は、本日、日経クロストレンドさんに
記事も掲載されましたので、ぜひご一読くださいな!

xtrend.nikkei.com

 それでは、ビッグサイトでお会いできますことを、楽しみにしております!

チームの心理的安全性と、心理的柔軟なリーダーシップ

Teamingがテーマだった People Analytics Tokyo #2 というイベントで、お話をしてきました。

 

成果の出るチームをつくる心理的安全性と、

その心理的安全性をつくるための「心理的柔軟なリーダーシップ」について

35分ほどお話をさせて頂きました。

下記から閲覧/ダウンロードできます。けっこう渾身の資料なので、ぜひ!

 

 
なお、今後のイベントは、
 
9月17日
なでしこジャパンの籾木選手や元Jリーガー、そしてカルビー常務の武田雅子さんをはじめとした、豪華ゲストと語る ZENTech Night@市ヶ谷
 
10月9日 16時~東京ビッグサイトにて
(事前登録で、3,000円が無料になるそうです!)
 
で登壇予定です。
 
 

いま話題の「心理的安全性」について、本気出して科学的に分かりやすく説明してみた

「成果を上げるチーム・効果的なチームは、何が決めるのか?」
2012年から、Googleのリサーチチームが「Project Aristotle」の中で明らかにしました。

そこでは「心理的安全性」が最も重要だった、と結論付けられています。

 

けれど、わかったようでよくわからない心理的安全性」とは、ほんとうには、いったい何なのでしょうか?

わたしたちは、この知見をどう活かして、自分の職場で生産的で効果的なチーム作りができるのでしょうか

 

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rework.withgoogle.com

 

実は、心理的安全性」には、およそ50年の研究の歴史があります。

その意味では、Googleは、心理的安全性は確かに、職場の生産性に効果的だと「再発見」したに過ぎないとすら言えます。

 

ここでは、その50年の歴史を圧縮して、いまの科学でわかっていること、
わかっていないことをお伝えしていきたいと想います。

 

まず、この「心理的安全性」というコンセプトは、経営学の一分野として位置づけられます。

中でも、組織論と呼ばれる分野に該当します。

 

この組織論では、「個人」「チームやグループ」「組織」という3つの規模で、人またはその集団を捉えます。

 

この「心理的安全性」が存在することは、それらどのレイヤーでも、大事だとされています。

 

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これら3つのレイヤーがありますが、Googleの調査では「チーム」に着目しています。この「チームの心理的安全性」は、実は20年ほど前、1999年に、ハーバード大学エドモンドソン先生が、この分野の金字塔となるような調査研究をまとめたことで、一躍組織論の中で、注目される概念になりました。

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「チームの心理的安全性」が注目されるようになったのは、組織の業績を上げる上で「チームが学習すること」が、組織論の中でも「組織学習論」と呼ばれる分野で、重要視されているからです。

 

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これら、組織学習論でいうと、「U理論」「学習する組織」などの著作のある、MITのピータ・センゲ博士が有名ですね。

 

「チーム」とか、「学習」という言葉について、今一度、整理しておきましょう。

 

いまを生きるわたしたちは、ごく自然に「チーム」という言葉を使います。

けれど、Ostermanさんという研究者によると「チームという概念それ自体が、1980年以降、最も広まったイノベーションのひとつ」なのだと言います。

(Osterman, P. (1994). How common is workplace transformation and who adopts it?. ILR Review, 47(2), 173-188.

 

つまり、職場における「チーム」というコンセプトは、発明され、導入され、広まった、ここ40年くらいの新しい概念だと言うのです。(スポーツにおける「チーム」は、もっとずっと昔からあったことでしょうが。)

 

そして、「チームの心理的安全性」の研究の元祖である、前述のエドモンドソン 先生は、チームについてこのように言っています。

 

「チーム」は名詞ではなく、動詞:チーミングである。

どういうことでしょうか。

 

例えばあなたが、新入社員で、10月1日、内定式に行ったとしましょう。
友達はおろか、知り合いも一人もいません。

横長のテーブルごとに、3人づつ腰掛けています。
で、言われます「左右の人と3人でチームをつくってください。」

 

果たしてこれは、チームでしょうか?

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チーム、というよりは「個人の集まり」と言ったほうが、正確かもしれません。

 

チームとは、単に個人の集まりにつけた「名前」ではないはずです。

チームとは、ちょうどこんな風に、メンバーの間であったり、
メンバーと、外にあるゴールや問題との間で、何かしらの相互作用や活動が行われているはずです。

 

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このことを、エドモンド先生は次のように言いました。

「チームとは、人々が互いに新しいアイディアを生み出したり、互いに答えを見つけたり、互いに問題を解決したり、するための活動である。」(2012, Edmondson)

 

これが、チームが「動詞:チーミングだ!」と彼女が主張する、その意味です。

 

さて、わたしたちの「チーム」は現在、どんな状況に置かれているでしょうか。

 

過去の成功事例や、偉い人の書いたマニュアル通りにやればオールオッケーなチーム(実行志向のチーム)は減っていて、「不確実性と難度の高い挑戦」が求められるようなチーム(学習志向のチーム)が、増えてきているのではないでしょうか。

不確実性の高い世界では、チームは「学習する」必要があります。

マニュアルを学ぶ、ということではなく、実践や挑戦、失敗から学ぶ必要がある、ということです。

 

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(図左:フォードT型。世界で1000万台売れたとか。図右:テスラ車。)

 

これら、チームの差異を比べると、次の図のようになります。

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そして「チームの心理的安全性」とは、「チームがいま業績を上げる」ために必要なのではなく、未来をつくる、ために「チームが学習する基礎」となるから、重要だ、というのがこの20年の「チームの心理的安全性」研究の結論です。

 

いくつか、主要な研究をレビューしてみましょう。

 

まずは、本稿で登場3回め。1999年の、エドモンドソン先生の研究です。
ちなみに、6,000回以上引用されている、化物論文です。

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 続いて、2011年のリーダーシップと心理的安全性に対する研究です。

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上記のように心理的安全性に関する研究は、特に米国を中心に盛んに行われており、

チームの心理的安全性は

  • チームの学習を推進し、中長期で業績や、質の高い意思決定に繋がる
  • 上質な人間関係と、リーダーシップ、特にサーヴァント・リーダーシップによって育まれる
  • あるチームの方が、ないチームよりも、衝突/問題が報告される可能性が高い(揉み消されない・起きた問題が隠蔽されず報告される)

  • それがあると、起きた衝突/問題は、人間関係の拗れにはならず、問題を吸い上げ、解決策を幅広く検討するために活用される。

 とされています。

 

さて、改めて「チームの心理的安全性」とは、
いったいぜんたい、何のことでしょうか?

 

エドモンドソン先生のもともとの定義では、次のように書かれています。

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もう少し、噛み砕いてみましょう。

チームが心理的安全、とは、つまりこういうことです。

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もっと、噛み砕いて言うと。

 

「このチームだったら、大丈夫」と思えること。

それが、心理的安全性です。

 

 

さて、ではどうしたらいいのか?
みらいをつくるチームにとって重要な「心理的安全性=大丈夫」をどうやって作ればいいのか。という疑問が残ります。

研究では、

サーバントリーダーシップが大事だ
・リーダーのコーチングが大事だ
・上質な人間関係が大事だ

など、いろいろなことが言われていますが、ふたつ問題があります。

 

ひとつは、上記のような「大事なこと」を聴いても、具体的に何をどうしたらよいか、わからない、という問題。

もうひとつは、アメリカの研究がほとんどであるため、日本の企業風土で活かして役に立つのかわからない

という、ふたつの「わからない」問題です。

 

というわけで、実践する上でのヒントがわからない時は、実践して成果を出してきた、実務家に聴いてみるのが一番でしょう。

 

12月11日18:30より、
元ドコモ・ヘルスケア社長、現オムロン株式会社 イノベーション推進本部の竹林さんをお呼びして「心理的安全性×イノベーション」についてお話をいただきます。

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こちらのリンクのFacebookページから詳細を確認いただき、お申込みフォームにご登録ください。
料金は無料だそうです。(先日打ち合わせをさせていただきましたが、めちゃくちゃおもしろかったです)

 

下記のイベントは、300名の登録をいただき、大盛況のうちに終了致しました。ありがとうございました。

この2018年11月20日夜、都内でイベントが開かれます。無料だそうです。

 

 日本の人事部「HRアワード」で個人の部・最優秀賞を獲得された、
武田雅子さんをお呼びして、2時間。対談形式でお話をお聴きします。

(わたくしも僭越ながら、10分~20分ほど、ここで書いたような「心理的安全性の科学」を、会場にシェアさせて頂ければと思います。)

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武田雅子さんは、株式会社クレディセゾンで取締役を務められ、50歳にして「初の転職」現在は、カルビー執行役員・人事総務本部長を務めていらっしゃいます。

 

イベントのお申込みは、下記Facebookページに記載のある、Googleフォームからどうぞ。カルビー武田雅子さんに聞く、チームの心理的安全性構築 

  

 また、チームというよりは個人向けですが

「悩みにふりまわされて しんどいあなたへ」という、個人の悩みの解決法を書いた書籍も、好評発売中です!(Amazonストレスカテゴリで1位、和書全体で12位などを獲得。首都圏JRの交通広告も出ました!)

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だれでもわかる!内部留保の話(トヨタの内部留保は5000年!?)

トヨタ内部留保、使い切るのに5千年、という記事が目に止まったので

  • 内部留保って、実際のところなに?(トヨタにそれだけの現金があるわけじゃないよ!)

って話を、MBAでも誰でもわかるように書きたいと思います。

 Businessman analyzing financial report data company operations, balance sheet, fintech

 

 

まず、本記事は特定の政党批判をしたいわけではありません。ただ「企業のたんまり溜め込んだ内部留保を使えばええやろ!」という誤解を解きたい記事です。(共産党以外にも、内部留保に課税する、を公約に掲げた党や、「内部留保を溜め込んでいる!還元すべき」という論調のメディアも良くあります)

 

この内部留保使い切るのに5千年、というのは、2つの意味でナンセンスです。

 

毎日給与27円アップ!!うれしい?

まず、ひとつめは大変単純な計算なのですが、

トヨタ自動車の3月期決算を見てみたら、子会社も含めて連結内部留保は約20兆円。毎日1千万円ずつ使っていくとする。想像できませんが、使い切るのに5480年かかる。

このお金を生かしたら、何ができるか。内部留保を賃上げに回す。正社員の雇用を増やす。そうすれば、トヨタの車はもっと売れるようになる。

とあります。しかし、トヨタの従業員は連結で364,445人居ます(2017年3月)

毎日1千万円を、36万人で割ってみます。うーん、一日27円の賃上げ、魅力的だ!

 

もちろん、毎日一千万という仮定がおかしいわけです。*1

 

内部留保とは、なにか?

ちなみに、2007年にはトヨタ内部留保(この記事では、企業の決算書類の、利益剰余金を参照してます。*2 )は12.4兆円でしたから、
現在の19.5兆円まで、+7.1兆円を11年かけて増やしたわけです。

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さすがに、何十年もかかって貯めてきたものを、一年で使うと、今年は賃上げ、来年は賃下げ、になってしまいますから、増加の平均をとってみましょうか。 

「平均して年間6,500億円くらいある」と考えれば、たしかに、賃上げや採用や、いろんなことに使えそうです。ほんとうにそうなのか?ここから、この「内部留保」について、もう少し見てみましょう。

 

さて、内部留保の説明をしようとすると、バランスシートと損益計算書が…という話から始まるのが世の常ですが、会計を知らない人には、出たよ小難しい話…となりますし、会計を知っている人は、この説明を読む必要がありません。

 

よって、こんなところから始めたいと思います。

 

たかしくんの新生活!!

たかし君は、いま

・現金20万円

・パソコン1台(30万円のMac Book Pro)

を、いま持っています。

 

レストランで食べたご飯や、借りているお家の家賃や、少額の消耗品と違って、
パソコンは高額ですし、売ったらお金になりそうですし「資産」と呼ぶことにしましょう。

 

図でたかし君の「資産」を表現すると、こういうことになります。

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でも、たかしくん、実は、去年までは一文無しでした。

この一年で、就職して、お金をいっぱい稼げたので、

50万円分の「資産」を形成することができたんですね。

 

ちなみに、たかしくんは、一文無しだった去年から、

今日この日までで、300万円稼ぎました。

 

けれども、家賃と生活費で、たくさんお金を使いました。

いっぱい飲み会にもでかけました。結婚式にも行きました。

 

(資産となるパソコンを買う費用や、手元に残る現金以外では)

この1年で、260万円使いました。

 

そうすると、300万円ー260万円は、40万円手元に残っているはずですよね。

でも、いま、たかしくんは、

30万円のパソコンを買っていて、20万円の現金を持っているわけです。

 

40万円しか手元にないはずなのに、50万円分の資産がある…。

どういうことでしょうか?

 

実は、10万円、お金を借りていました。

 

今までの話を図にすると、こうなります。

 

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お金の調達のしかたを、赤枠の右側に。

お金の使いみちを、青枠の左側に。書いています。

 

実は、これが「バランスシート」または「貸借対照表」と呼ばれるものです。

右側に、お金の調達の仕方を、

左側に、調達したお金が、どんな資産(現金も含めて、機械や土地や建物や…)に

変わっているか、を表しています。

 

そして、この「稼ぎのあまり」のこと、つまり利益のことを、企業の場合、内部留保(Retained Earnings)と呼びます。*3

 

つまり、内部留保とは、お金の調達の仕方につけられた名前!!

つまり、内部留保とは、企業にそれだけの現金があるかどうか?を示すのではなく
お金をどのように手に入れたか、という調達手法を示す言葉なんです。*4

 

ここまでの話を、企業のバランスシート(貸借対照表)っぽく書くと

下記のようになります。

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だから、内部留保が40万円あっても、
現金は20万円しかない。その20万円も、うち10万円は負債(借金)だったりするわけです。

 

 ちなみに、お金の調達手法には3種類あります。


1.事業活動をして利益を出す(累計) → 内部留保(Retained Earnings)

2.借金してお金を調達する → 負債(Liability)

この2つはたかし君の例でも見てきました。

これに加えて、企業の場合は
3.株式を発行して資金調達 → 資本金(Common Stock)

があります。 

 

 

たかしくんの新生活 ~それからの1年~

正確を期すため、たかし君の例を、もう一年続けましょう。

 

確認ですが、たかし君は、「今年」持っている資産は50万円です。
20万円の現金と、30万円のパソコンです。

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ここから、時計を一年、未来へ進めてみましょう。

 

なんと!たかし君は、年収がガクッと落ちてしまいました。
一年で100万円になってしまったのです。

たかし君も生き延びるために必死です。

生活コストを、85万円に抑えました。*5

 

これを図にすると、次のようになります。

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一年間で、15万円、売上によってお金を調達したわけです。

ちなみにですが、資産を買うのに使った現金は、費用に含めません

(だって、税金って、売上ー費用=利益で、税金は利益に掛かります*6から、資産を買うお金が費用に含められるなら、すべての会社が「とりあえず金の延べ棒買いまくるか…あとで現金に戻そ。そしたら税金ゼロやん!ワイ天才か!」ってなりますよね)

 

ともあれ、

一年間で、15万円、売上によって、つまり事業を行うことで、お金を調達したわけです。 

 

先程まで見ていた、バランスシート(貸借対照表)の右側(お金の調達の仕方)だけに注目してみると、次のような変化がある、ということになります。

 

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細かくいうと、

・去年の内部留保=40万円

・今年の利益(Net Income)=15万円

・今年の内部留保=去年の内部留保+今年の利益=55万円となります。

 

そして、この一年では、ひとつも資産を購入しなかったとすると、
現金は15万円増えているはずです。

 

では、バランスシートの左右をあわせて、図にしてみましょう。

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この一年では、15万円しか利益が出ていない、つまり、15万円しか内部留保は増えていません。

ちなみに、この15万円というのは、法人税などの、税金を払った後の15万円です

*7

 

時折、内部留保に課税せよ!という意見を見ることがありますが、

内部留保に課税をする、ということは、既に税金を払った後のお金に、
さらに毎年税金をかける、ということを意味しますし、
この場合では、内部留保が55万円あっても、現金は35万円しかない。
さらに、うち10万円は借金、ということになります。

 

内部留保は、現金で持っているかもしれませんし、機械や土地の形で持っているかもしれませんし、投資などの有価証券で持っているかもしれません。

 

そして「自分で稼いで調達すると、毎年税金がかかるから、
銀行から借りるか、株式を発行した方がお得!!」

ということになりかねません。

 

さて、 ここまでで、内部留保については それが何なのか、

少なくとも「企業が自由に使える現金のことではなく
企業のお金の調達の仕方・形態をさす」ことをご理解頂けたかと思います。

 

トヨタのバランスシート!

ここからは、実際にトヨタのバランスシートを見てみましょう。2018年3月期(2017年4月~2018年3月の1年間)を見ています。

 

もちろん、簡略化をしています。

 

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バランスシート全体のサイズが50兆円。(たかし君は50万円でしたね)

 

左側、つまり「お金の使いみち」を見ると、現金ぽいやつが18兆円あります。

現金ぽいやつの中身は、現金以外にも定期預金、売掛金、前払費用、金融債権など、複雑なので、ざっくり「すぐ(1年以内)に現金にできそうなやつ」だと思ってください。 

長期金融債は、 リース事業や、トヨタの金融事業(ローンで車を買うお客さんにお金を貸していて、それを取り立てる権利=債権があるわけですね。)

投資は、トヨタ系列の会社に2.8兆円、他の会社の株式を7,6兆円分持っています。

固定資産は、さすがトヨタですね、機械装置が11兆円、車両等が5兆円、建物4兆円などが計上されています。*8

 

難しいので、もっとざっくり書くと、こういう感じになります。
(左側だけ変わってます)

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次に、右側(調達のしかた)を見てみましょう。

早めに返す借金ぽいやつ、つまり、流動負債が、流動資産と同じくらいあります。

内訳の主なものは、5兆円の短期借入金、4.2兆円の長期で借りたけれども、次の一年で返す予定の借入金、2.6兆円の買掛金などです。

固定負債は、10兆円の長期借入金に加えて、0.9兆円の退職年金に当てる費用、などです。

内部留保(利益剰余金)は、これまで見てきたとおりですが、

トヨタの場合、昨年より1.9兆円増えて19.5兆円となっています。

2.5兆円出した利益のうち、配当で0.6兆円を株主に還元し、1.9兆円を内部留保に計上した、ということになります。

 

あわせて売上も見てみましょう。 

ざっくり、こんな感じです。

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ということは、貸借対照表(バランスシート)の右側だけを
去年と今年で見比べると、以下のようになるわけです。

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それこそ、内部留保の5%課税されたら、その期の利益が半分になる、とか
トヨタの場合、そのくらいのインパクトがあります。*9 *10

 

いずれにせよ、上記の議論でわかるとおり「内部留保」の絶対額を元に、
それも、その額が多いことを「企業が現金を溜め込んでいて、それをなにかの原資に使える」かのように表現するのは間違っています。

 

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内部留保をやっつける方法!

内部留保って、繰り返しになりますが、要は、(法人税などを支払った後の)毎年の利益(のうち、株主への配当を引いた残り)が、毎年溜まっていったものです。

なので、内部留保をへらすためには
1)赤字になる(単年度決算が黒字だと、内部留保は毎年増えます)
2)株主への配当を増やす

ことが必要です。

 

トヨタの場合では、もちろん現金等を17兆円も持っていますが、それは次の一年では返済に当てなければいけません。

 

また「無借金経営」がメディアで持ち上げられることもありますが、

無借金ということは、基本的には「資本金」と「内部留保」だけでビジネスを回しているということであり、内部留保を糾弾するのであれば、無借金経営も糾弾されなくては一貫性がありません(もちろん、糾弾する必要はありません)。

 

内部留保額のみを見て、それを無理やり還元させようとすると、

今度は、機械や設備を売ることになるでしょう。

 

なぜ、労働者にお金が還元されないのか 

本稿では長くなってしまいましたので割愛しますが、
労働者にお金が還流していかないのは、
内部留保とは別の問題だと考えており、内部留保を還元するという視点ではなく、

労働者の交渉力を上げるという方向で解決するのが良いのではないかと考えています。*11 *12

 

また、「実際にかかる税金」は、
誰からとるか、ではなく人々が価格の上昇や賃金の下降に対して、
どれだけセンシティブかで決まる

という、ミクロ経済学の基本的な理論があります。

 

たとえば、いま、タバコが一箱500円だとします。

政府は1)企業から取る 2)消費者から取る*13 という2つの選択肢があります。

いま、政府が、タバコ増税をしました。一箱プラス30円の増税です。

 

けれども、人々が、誰一人としてもうタバコは吸わない!
「30円も値上がりするなら、タバコやめるわ!!」
「ていうか、1円でも上がったら絶対買わない!おこおこ!」と言ったとしましょう。

 

すると、企業は、タバコの値段を、470円(値下げ)+30円(税)に下げざるを得ません。

つまり、30円の税金は、このケースでは、すべて企業負担になります。

 

これは、政府が企業から集める(企業が500円を預かって、30円を余分に税金として政府に払う)場合も、個人が直接払う(個人は売店で470円払って、30円を直接政府に収める)場合も、同じ結論になります。

なぜなら、消費者からすると、結局払う金額は500円だからですし、

企業も、30円を預かるかどうかの違いで、結局売上は470円だからです。

 

逆に、人々が、「タバコひとはこ30円増税?よゆー!」と、全く気にしなかったとしましょう。

そのとき、企業は、530円でタバコを売って、30円の税金は、すべて消費者負担になります。

 

実際には、この極端なふたつのケースの、間になります。

 

企業から重税を取る時、労働者の交渉力が弱いと、
そのしわ寄せは労働者にやってきます。

転職市場の流動性が低いとき、労働者は交渉力が弱いです。他に選択肢がないから。
労働者の貯金が無い時、労働者は交渉力が弱いです。すぐ辞めると困窮するから。
労働者のスキルが低い時、労働者は交渉力が弱いです。代わりが居るから。

 

そんな時企業に重税をかけて、

「税金増えて、経営苦しいから、給与を下げざるを得ないんやで。すまんな。」

と言われても、労働者には交渉力が弱いわけで、

「企業から集める税金の、実際の負担」を労働者が強いられることになります。

 

あるいは「ワイ、シンガポールに本社移すから、日本オフィス閉鎖やで。すまんな。」みたいに、企業自体が逃げていく可能性すらあります。

 

この話は、「スキルと交渉力のない労働者がわるい!自己責任だ!!」とか、そういう話ではありません。

 

わたしたちが、ふつうの生活で、ふつうに「この、どこでも手に入るオニギリ、どこで買ってもクオリティそんな変わらないし、近くて安い方で買おうかな」と選択するのと同じように、

労働市場で、わたしたちは交渉力が無いと、すぐ買い叩かれてしまいます。*14

 

他にも「せや!金持ちの贅沢品に課税したろ!豪華なヨット、消費税2万パーセントかけたるわーー」

 

という、金持ちへの課税って、よく思いつくと思うんですが

(相当のヨットマニアじゃない限り)

・ヨットがそんな高いなら、プライベートジェット買ったろ

・ヨットよりコスパ良くておもろいパーティ開いたろ

・てか、別にオレこの国でなくても楽しく生きていけるし、海外で豪遊したろ

 

となって、結局、特定の贅沢品に課税したところで

ヨットの売上↓↓ → ヨットをつくる会社の経営↓↓ → 従業員の給与↓↓

となったりしてしまうわけです。*15

 

「税金は、結局、逃げれない奴が負担する」
ことになるわけです。*16 *17 

 

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その他コメントへの返信など↓*18*19

 

また、税金は誰が負担するか、についてもう少し詳細な説明は以下のとおりです。(英語)

 

*1:14:40 id:nao_cw2 さんへの追記:ふたつの要素から成る掛け算のものは、片方をとても小さくすれば、片方をとても大きくできます。毎日一千万というトヨタという企業にとって、ごく少額を掛け算の片方に用いれば、何年で使い切るか、というもう片方の要素を、5000年というとても大きな数字にできます。ですから、スケールを100年にして50倍にしてもOKだったのに、なぜ一日一千万という少額のスケールにしたか、ということがナンセンスだと感じたところです。そして、毎日一千万円というおかしい仮定を抜いて、例えばおっしゃるように、スケールを100年にして、50倍にすれば、今度は意味がありそうに聞こえちゃいますよね。でも、内部留保って、そういう性質のものじゃないんだよ、というのが、ここ以下で展開するお話です。仰っていることはまったくもって、そのとおりです。なので、ここに「毎日一千万という仮定がおかしい」と書きました。

*2:細かくは専門書を当たってください。

*3:もちろん正確には、1)過去の蓄積、2)利益から株主への配当等を引いたもの、ですが、それは記事の後半で扱っています。単純なところからいきましょう!

*4:ご存知のとおり、キャッシュフロー計算書とは違うので、ホントは現金だけ追っても仕方ないのですが、未払金とか前受金とかを考え始めるとちょー大変なので、やめましょう。

*5:細かく言うと、借金の利子などもここに含みます。今回は面倒なので、税金も含みましょう。つまり、ここの利益は、Net Incomeであって、EBITやEBITDAではありません。

*6:おっしゃる通り、これは嘘です。益金ー損金=所得に対してですね。というかそういうこと知ってる方は対象外なので…。

*7:細かいことをいうと、日本の場合、パソコンは4年で減価償却が必要なので、定額法を用いる場合7.5万円分必要で、その場合、利益が7.5万円分減るので、内部留保は47.5万円になるのは、詳しいみなさんがご存知のとおりです。ただその場合は税金も減るので、47.5万円よりは少し多めに残るイメージでしょうか。今回は無視しましょう。ちなみに、ぼくだったら赤字決算でないなら、30万円未満のパソコンを買って、少額減価償却資産の特例を活用しますかね。

*8:はい、資産購入時の価格が23.6兆円、減価償却の累計分が13兆円あるので、10.2兆円分がNetの資産です。

*9:なお、一年分の売上の19.5/29.3 = 66.6%が現在のトヨタ内部留保です。ちなみに、2010年シャープは内部留保が0.65兆円あり、これは売上の2.7兆円のうち23%の過ぎません。2013年には、0.3兆円のマイナスとなり、売上の-11%まで落ち込みました。シャープのケースでは、売上の34%程度はガクッと落ち込んだわけで、66.6%が「安全」で「溜め込んでいる」かどうかは、悩ましいところです。

*10:また、内部留保になる前のお金、つまり単年度の利益をもっと労働者に還元せよ、労働分配率をあげよ、という論点は、それはあり得るかと思います。もちろん、もっと株主に還元せよという論点もありえます。企業がお金の使いみちを迷った時、単年度のPLを小さくして従業員に還元するか、それとも設備投資をして次年度以降の利益を上げるか、有価証券に投資して配当を狙うか、銀行に預けて利子と流動性を保つかなど、様々なパラメータを考慮する必要があるので、この記事ではそこまでは扱いません

*11:「正社員の労働流動性の低さ&雇用がいかに守られているか」「労働者の、モビリティの低さ(英語ができない、島国なのですぐ国や会社を去って隣の国で働くということができない)」の2点がメインの論点かと思っています

*12:14:50 id:rohiki1 さんへの追記:交渉力のある労働者は、賃上げするお金がない企業に尽くす必要がありません。他の賃上げしてくれる会社へ移ればいいのです。海外の会社でもいいかもしれません。

*13:例えばタバコ購入IDカードとかをつくって、購入点数が記録されていって、その分連携した銀行口座から引き落とされるとしましょう

*14:交渉力は、単にスキルだけの話ではなく、受給バランスでもありますから「人手不足」のときは、労働者側が強いといえます。繁忙期の「いま辞められたら困る」時期とかもそうですね。

*15:たぶん、労働者への還元は、内部留保とかそういうことを言うより、1.サービス残業をきちんと違法化した上で 2.時間あたり給与の絶対額が低い企業かどうかを単純にモニタリングした方がいいんじゃないかな(正社員月収をモニタリングすると、正社員減らす方向に動くので。)と思っていますが、波頭さんの「AIとBI」などを読むと、ベーシックインカムがひとつの解、つまり労働者にある程度以上還元できない会社は、その会社にしがみつく必要がないので淘汰される。かなあと思っています。これについては、また別途考えたいと思います。

*16:トリクルダウンが起きなかった(と、私は思っていますが、データがあれば心を入れ替えますので、データをお持ちの方はご教示ください。)ように、企業が儲かっても従業員に還元されないように、企業に負担を強いてもその負担が従業員や下請けに転嫁されうる、というのが、交渉力の有無の話です。

*17:主要国でカルテルを結んで、「せーの」で法人税キャピタルゲイン増税するのはありです。多くの国で揃えてやれば、逃げられる恐れはないです。しかし、税金を操作することによる各国家の経済政策等の自由度が失われることと引き換えになりますし、十分な国数をまとめあげることができない限り、このカルテルを結んだ国家以外が繁栄していくということも十分に考えられます。

*18:id:Assume さん、自己紹介ありがとうございます。具体的なご指摘を頂けましたら修正致しますので、ご連絡お待ちしております。

*19:損益計算書と人件費と内部留保の関係を追記

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