英会話ヒトリゴト学習法 /167375

はじめての課長の教科書
あたらしい戦略の教科書

に続く、酒井穣さんの3冊目:英会話ヒトリゴト学習法
http://www.amazon.co.jp/dp/4569703461

この本は、ビジネスの脳を鍛えるという視点で英会話の勧めを行う名著である。
この本の裏表紙に書かれている

「日本語で思考する私」と「英語で思考する私」のブレーンストーミング

というフレーズで、ふと「思考訓練の場としての英文解釈」という超絶な本が(僕には途中までしか読めなかった)あったのを思い出す。
共通因子は、英語を題材として、頭を鍛錬するということである。


以下、理論と実践のまとめを、本書を一読した人が復習・実践しやすいように。つまりは自分へのまとめとして記す。


◆理論編

◇「何故、外国語を学ぶのか?」
筆者は答えとして、アルターエゴ=もう一つの人格=脳内での対話相手の形成 という仮説を挙げる。

◇「では、どうやって学べばいいのか?」
もうひとつの人格、すなわち「英語で考え、英語で話す」程の実力を身につけるには、
・統制処理:日本語で内容を考える⇒文法に照らし合わせて⇒英文に直す。 【英語のスピード】=【このサイクルを素早く回すこと】
という事をやっていたのでは不可能。
こういうやり方では、時間が掛けられるリーディングや、発音を考えなくていいリスニングでは通用しても、スピーキングは不可能に近い。

そこで、逆に、「スピーキングスキル」=「脳内英語回路確立の物差し」としてしまい、日本語回路に頼らない英語回路の確立を、スピーキング:【ヒトリゴト英会話】によって行う。

◇コミュニカティブ・アプローチ
正確性と流暢性は、トレードオフの関係にある。日本の英語教育が文法から入り、前者を追及してきた結果、大失敗したことをそろそろ認めなくてはいけない。
ヒトリゴト英会話では「とりあえず、コミュニケーションが成立する事」を目標にし、流暢性をまずは確保し、文法による正確性はその後確保していく、という順番を取る。

従って「相手に言いたい事を伝える」という、コミュニケーションの成立に重点を置く。

◇リスニングとスピーキングの差
例えば、多聴を繰り返し「英語をそのままリスニングできる」=英語回路がある程度育っている人でもスピーキングが出来ない人が居る。
これは、リスニング:スピーキング=受動:能動 という質的な差異に依存する。その差は、「料理の味がわかる事と、その料理を作れる事」という非常に大きな差異に対応する。

語彙レベルで、「受身の語彙」「自発の語彙」というのを分けた時、「自発の語彙」をどれほど増やせるかが、スピーキングにおける一つの勝負となる。
cf.日本語で奢侈(しゃし)って読めて・贅沢してるって意味ねと分かっても、日常生活で「アイツって、チョー奢侈淫佚(インイツ)じゃない?てかマジむかつく〜!」とは使わない。この場合奢侈が受身の語彙。Blog書いてわざと難しい言葉を使うのは、自発の語彙を増やす効果があるとおもう!

◇ヒトリゴトを喋る
言いたい事⇔言える事 のギャップを、その悔しさを何度も体験すること。そうやって、意味不明のままでも聞き流せるリスニングと違い、脳に汗を書くこと。そうして、自分の成長という楽しみを、習得のモチベーションとすること。

◆実践編Lv.1:基本語彙の習得。

背景:無駄時間の活用で、まずはアウトプット形式の勉強をする。
・どうでもいいことをやっている時間を見つける。
・その時間に知っている英単語を一つ取り上げる。
・その単語をヒトリゴトで英語で説明(定義)する。できるだけ長く続ける。
・自分の苦しい説明と、英英辞典の定義を比較する。
・ヒトリゴトで説明を3回読む。


◆実践編Lv.2

背景:リズムは年を取ってからも身につけられる。
文の意味の中心となる内容語と、文法的つながりを示す機能語を弁別する。機能語は素早く発音されるので聞き取りづらい。内容語は、ゆっくりはっきり発音されるので聞き取り易い。
http://www.gaikoku.info/english/president.htm にアクセス。
・映像、音声、テキストの揃っているモノを一つ選択。
・テキストに目を通し、内容語と思しきものを○で囲む。
・映像を見る。身ぶり手ぶりが内容語が話されている時にどうか確認する。
・台本を片手に、○のついた場所を強調するように、ヒトリゴトする。
・1週間、一つの台本だけをヒトリゴトする。
・自分が演説者と同じ状況であれば、というのを想定し、イメージトレーニングする。

◆実践編Lv.3

背景:トヨタ式のなぜ?を5回!を、英語でやろう。
Why? -> Because.
Why?の対象が見つからない時は、日本語でいつも言っている「愚痴」にしよう。
「マジ疲れた」⇒「I'm exhausted」⇒「Why?」⇒「Because...」
自己主張は、他人の意見にネガティブに反応するところから始まるが、理由が言えなければコミュニケーションにはならない。
・自分が良く使う日本語のヒトリゴトを5つ見つける
・5つの表現を英語で定義する
・英英辞典でその定義を確認する
・日本語でその独り言を言う変わりに、その英語のヒトリゴトを使うように変えていく
・ネガティブなヒトリゴトを(むかつくー!とか)言い始めたら「why?」と自分に問う。Because…。 5回繰り返す。
・原因を解決する。
・同じ問題を、日本語でも解決してみる。

  1. + + + + +

そういえば、読書メーターというサービスの利用を始めて、そろそろ5ヵ月。
http://book.akahoshitakuya.com/u/2037
その間、80冊の本を読み、この本がちょうど80冊の節目になるのであるが、
その中で読んだ「英語学習法」の本として、そしてまた「脳の鍛練法」の本として、
かなりお勧めできる一冊だ、と思う。


ところで、この本を読みながら思ったのは、

では、英語脳の英語人格は、選べるのではないか?

ということである。
通常われわれが人格を変えるのは、非常な労力が発生するが、

・たとえばディスカッション相手として便利そうな、分析型の人格を
・たとえば前向きな人生が送れるような、イケイケプロモーター型の人格を
・たとえば他人の心に寄り添う、サポーター型の人格を
・たとえば組織を率いる、リーダーシップ発揮型の人格を

何らかの方法で、意識的に選び、第二の人格を作る事ができるのではないか?
もし、それが可能になれば、選択さえ過たなければ、これほど便利な事はないのではないか?

そして、選択すべきは、今の自分自身の人格と対照的な人格だろう。
というような事を感じた。