バングラディシュでビジネスをやってきた!/218614
「いい体験をした」で終わらせないために。
◆バングラディシュでビジネスをやってみた
◇概要:Simple model solve both.
バングラディシュで、ビジネスをやった。
僕らの視たバングラディシュには、解決すべき問題があった。
解決すべきと信じるに足る、問題があった。
その問題を追ううち、
「農村に行き、インタプリタと共に調査を行い、
グラミン・コミュニケーション及び
グローバル・コミュニケーションセンターに提案する」
というインターンの【枠を超える】ことができた。
以下、詳細を綴る。
◇問題発見:矛盾を見過ごさない
農村滞在10日間余。
初めの数日はOne Village One Portalという、国勢調査のデータ集めを行う傍ら、「問題」を見つけようと苦悩した。
問題は当初、見つからなかった。
問題がない事が、問題に見えた。
問題だとはっきり分かるもの、目の前に見えているものは、殆ど手に負えないくらいの、ビッグプロジェクトだった。
例えば、頻発する停電。
僕が電気技師ならいざしらず、僕が停電にどう対処できるだろうか。
そして、自家発電や太陽光発電を、少し裕福な家庭では導入しており、対処は「時間かカネの問題」。
例えば、汚水。
沼に、井戸水に、ヒ素が含まれている。現地の人々はペットボトル飲料を買う事で対処している。
水を奇麗にするプロジェクトを僕が? 必要ではあるが、「僕のプロジェクト」には感じられなかった。
そして、東京では見れない、美しい風景と楽しそうな人々、
「貧困国」と聞いてはいた。確かに貧しい。貧である。であるが、多くは【困ではない】ように見えた。
好奇心、笑顔、会話。そして、一握りの金持ちと、一握りの本当に「貧困」な人。
そんな中で、
いつも心にあったのは、毎日毎日僕らを乗せてくれた、リキシャ(人力車)のドライバーであり、
話を伺った小作の方であり、低い給料に喘ぐ、小学校の教員だった。
そして、インタビューの中に一つの矛盾を見つけ、僕らAチームは、その矛盾を追う事になる。
事実1.街では高い失業率・職の少なさが大きな問題だと
事実2.小学校教員の給料は非常に低く、多くの学校で教員の数が不足している
一方では人が余っており、
一方では人が足りないという。
その原因は、
・教育を受けているか
・教育を受けていないか
の違いに起因する。
教育を受けている人でなくては、教員になれない。
教育を受けていない人が、職を失っている。
すなわち、問題は:
・教育のあり/なしにおける格差
・小学校教員の給与面での魅力の低さ。
そして、これら「問題」は一見階層が違うが、
未来のバングラディシュから現在を俯瞰する事で整理される。
未来に、2020年のバングラディシュにおいて、
・教育を受けていない人はますます競争力を失い、失業が増える。
・その時において、教育を受けていない人を【救う】【見捨てる】のどちらかを選ぶ必要がある。
・【救う】を選ぶなら、それは政府が税金で救う事になろう。
・その税金は、教育を受けた人によって贖われる。
・競争力を、教育を受けた彼らが持つならば、彼らは海外へ流出する。
・その競争力の上限は、教育の質と相関がありうる。
そして、この問題をシンプルに解決しようとすれば、ソリューションはこうなる。
・放課後の学校を用いて教師が読み書きのできない人を教える
・それをサステイナブルなビジネスモデルとしてキャッシュフローが回るように設計する。
◇仮説検証:事実を集める
さて、そんなビジネスを創る事は可能なのか。
仮説を、サポートしうる要素に分解し、事実を集めよう。
- Uneducatedと Educatedの格差は 問題である
Uneducatedは 社会の少なくない 部分を占める
Uneducatedは 失業率が高く 持続性が低い
将来、 Uneducatedは 社会の重荷に なりかねない
- その問題は 放課後再教育システムによって 解決可能である
- インパクト:
Education Levelと Job Opportunityに 相関がある
少し教えれば 大きく増える Job Opportunityがある
少し教えれば つけられる付加価値: 新しい職業機会がある
そういう職についてみたい
-
- 実現可能性
学校で教師が Uneducatedを 教育すればよい
教師にとってメリットがある
教師は時間がある
教師にとって十分な資金が手に入る
こんなことを、調べに行った。
事実は、集まった。
事実は、この解決策をサポートしているかに見えた。そして、
◇理想を描け
そして出逢い。
Anowaraという、70歳近くのお婆ちゃんに出会う。
元気で、こちらの質問にジョークで答え、からからと笑うそのお婆ちゃんは、
身寄りはなく、収入もなく、
時に借金を、時に物乞いを。
綺麗に言えば≪自給自足≫の生活を。
そのAnowaraばあちゃんが、言ったのは
「私は夫も子供も居ないから、後は死んでいくだけだけれど、私は楽しく生きるよ」
その日は早々とゲストハウスに帰り、
―各人、瞑想。
Team A 4人が、一人一人考えた。
私はなんのために、だれのためにここにきて、
そして、なにを成そうとしているのか、
なにをやりたいのか。
問題、とは、あるべき姿と現状のギャップ。
我々はあるべき姿を描いていたか。
あるべき姿を、描いて、いたか?
二時間も一人で考えたか。
その結果をつらつらと共有する。
一縷、光が見え始め、おぼろげにみんなが同じ方向を向いている事を知る。
自分の持てる価値を他者に提供し、対価を貰い、認められるということ。
それを通じて、
自分の人生の、主人公になるということ。
自分の人生を、コントロールするということ。
運命に翻弄されるのではなく、夢を描き、その実現に必要な行動を起こすということ。
Take initiative on my life.
ここへ向かって。
◇問題への執着:準備された枠を超えて
日数ものこり僅か、課されたプレゼンが気になってくる。
「提案したものが、もしグラミンに採用されたら…」
という功名心やはやる。
そして、我々4人が、日本に帰ってからどう共同作業する?
という話も詰めなきゃいけない。
提案先は、バングラディシュのケータイ会社
「グラミン・コミュニケーション」そして
「グローバル・コミュニケーション・センター」
その事を考えれば、有利に働くのは、提案先に価値をもたらすのは、
ケータイ電話を使ったサービスや、インターネットまわりの話。
幸い、ケータイに関する情報も村人からのインタビューで仕入れてある。
最近の市場拡大が目覚ましいこと。
音声通話のみならず、マルチメディアケータイを操る人も居ること。
SMSなど、使えるのに、知らないがゆえに使っていない「もったいない」サービスのあること。
しかし、しかし、
文字が読めない人が5割も居る。
インターネット以前の話じゃないの?
取り組むべき問題は、取り組む価値ある問題は、きっと、「教育」の方だ…。
教育か、モバイルか、
それとも他の案か。
・図書館/貸し本屋
・BOP市場向け保険
・農村に無い仕事の開拓(レストラン・花屋)
案をまた幾つも出し、絞りをかけていく。
放課後授業の案の検討に至り、
一人が言った
「腹落ちしない」
一人が言った
「これ、やっちゃえばいいんじゃないの」
そうだ、そうだった。
バングラディシュについて2日目、
ムハマド・ユヌスその人に会って聞いた言葉は何だったか。
彼に何を言われたのだったか。
「世界は変えられる、もしそう望むならば」
「明日からのチェンジメーカーではなく、
今日からのチェンジメーカーであれ」
オーケー、やろう。
教師を口説き、生徒を集め、実際に一度やってしまおうじゃないか。
その時、僕らは、燃える集団だった、と思う。
◇もう、インポッシブルなんて信じない
いかにして教師を口説き、生徒を集め、実際にやれるのか。
通訳の助力が必ず、必要だ。
英語という制約条件に阻まれないために、
パワーポイントを作り、図表を作り、通訳にわれらのミッションとパッション、
ビジョンと事業構造を説明し、協力を仰ぐ。
「Impossible」と言われる。
今日から3日は学校が休みで教師が捕まらないから無理だよ。
肉体労働者たちはその日を生きるのに精いっぱいで、教育にお金なんて出せないよ。
いろんな事を言われた。
通訳を口説き、地元の有力者を口説き、校長先生を口説き落とすまで、何度「Impossible」を聞いただろう。
識字できない、彼らにはお金が無い。
彼らは無能だから、そういう授業を受ける事に向いていない。
この国では教育にお金を払いたがらない。
大人向けにも、政府が無料でやっている教育機関がある。
教師は尊敬すべき人だから、識字できない大人に教えたりしない。
などなど、などなどなど。
いいから、やるのだ!
やれば、変わる。
リキシャドライバーを4人集め、
校長先生に同意を取り付け、
第一回の事業と授業のはじまりはじまり。
満足しなかったら、お代は要りません。
授業に満足したら、払ってください。そして。
収入:6tk×4人=24tk
支出:講師へ20tk
利益=収入―支出=4tk.
ビジネスとして、利益が出た。
TeamA・4人で一人1tk。
そして、自分の名前が書けるようになった4人のドライバーと、
嬉しそうな顔。
リキシャドライバーは言った。
150tk/monthまでなら、出せる。
impossible! お金がないから払えない、と言ったのに。
校長先生は言った。
子供たちに教えるより、学びが速くて教えやすい。
impossible! 彼らは無能で学べない、と言ったのに。
それどころか、肉体労働者たちは言った
「家に帰っても練習する」
「娘がこの小学校に居るんだ。娘と一緒に勉強するよ」
"Change" means "make impossible possible".
誰かが、誰もが、不可能だと思う事をやらなくてはならない。
Change for the value.
協賛だとか、提案先だとか、提携先だとか、
そういう事ではなく、自分が、解く事に価値アリと信じる問題のために動かなくてはならない。
バングラディシュまで行った価値は、あった。
この4人のチームで、あの4人のチームで、本当に良かった。
あの瞬間僕は、とても、幸福だった。
他の何が否定されても、他の誰に否定されても、
あの人たちは自分の、名前が書けるようになった。そうだろ?
あの人たちの笑顔をつくる、お手伝いができた。そうだろ?
もちろん、そのビジネスを維持・拡大できなかった後悔は残るけれども。
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