未来の働きかた、について[日々][思惟]/237110

  • Stanford GIT

Stanford大学が、今日本でも行われている『Global Entrepreneurship Week』の中の1イベントとして開催している、Global Innovation Tournament(GIT)というイベントがあります。

世界中の学生が、発表される「世界共通の課題」に取り組み、思考し、試し、その結果を3分程度の動画にまとめ、YouTubeにアップロードする、というイベントがありました。

「世界共通の課題」というのは、例えば去年は捨てられている「ペットボトル」をどうするか。というお題で、今年度は、「Make Saving Money FUN!(楽しく貯金してごらん☆)」がお題。現在の不況を反映したテーマです。

この課題が11月5日に発表され、11月13日・日本時間17時に回答(YouTubeへのアップロード)締切という、中々にタイトなスケジュールなのですが、今回、このStanfordGITに参加し、即席のチームを作り、協働する事ができました。

結果として、以下のような動画を提出できました。



素晴らしいメンバーに恵まれて、希有な体験ができたのですが、今回はそこから見えてきた(気がする)未来の働き方について考えを巡らせます。主に、「チームをつくる」という視点からの示唆を出します。

尚、ダニエル・ピンクの「ハイ・コンセプト」は読みましたが、「フリーエージェント化社会の到来」は未読ですので、あとで「答え合わせ」をしてみたいと考えています。

  • 短期のプロジェクトベースで、エネルギーを一気呵成、燃やし尽くす

今回、11月5日課題発表。11月13日・日本時間17時までに回答という、中々にタイトなスケジュールだったのですが、私が参加を決意し、メンバー候補に連絡を取り、出ないか!?とメンバーを誘い、そうして、5人のメンバーが揃ったのが、締切り21時間前の11月12日20時でした(笑)

そこから、終電までの3時間、超楽しくディスカッション/ブレインストーミングし、アイディアをひねり出しました。真面目と不真面目が融合した、楽しい空間でした。

  • Leverage Diversity and Capacity

そして
「SAVE Moneyって言うけど、SAVEって色々解釈できるよね、Social and Venture Entrepreneurとかw」
「じゃあ、S・A・V・Eそれぞれどんな解釈できるか考えようぜ!」
「V…バイオ? 」
「それ、VじゃなくてBだよww VだとSONY製品だなw」
みたいな場の暖めがあって、

「100万貯まって彼女できるなら、絶対おれ貯金するんだけどw」
みたいな『不謹慎』発言に、今回の火種が燻って、
「じゃあどうやって女の子と会わせるんだよw」みたいな所から、
「100万貯めてカレシが欲しい女の子とマッチングさせればいいんじゃん?」
といったアイディアに飛び火。

そして、ここから、

    • 貯金の目的(夢)と貯金の目標額とをまずは明確にしよう。
    • その夢に沿った、動機づけを、貯金するたびに行う。
    • 目標額を達成したら、そのお金をどう使えば夢が実現しうるか、サポートが受けられる。

→夢の実現を応援する、【Concierge Bank】を!

あれ、じゃあ銀行のメリットって?

    • 「定期預金」ならぬ「定額預金」。100万貯めます!って言ったら、100万貯める前に解約すると定期の解約みたいに手数料を
    • ユーザの行動データ・嗜好データの収集→マーケティングに
    • コンシェルジュサービスで、サービスの執行まで行って、マージンを取る(cf.海外旅行したいという夢に対し、旅行ツアーやパッケージを選別執行。10%採るとか。)

3時間でこんな風な「面白い」展開が起きたのは、こんな参加者が集まったからじゃないだろうか:

・空気読まない
・けど、人の発言を拾う/乗っかる
・揶揄する。でも馬鹿にしない。
・真面目にふまじめ
・バックグラウンドが、文理も、嗜好も、学年もバラバラ

こんな、優秀で、だけどバラバラな人、自分と違う人を集めること。
もしかしたら、合わないかもしれない人同士を繋げること。

こんな事が上手くいったのかもしれません。「誰をバスに乗せるか」が驚くほど上手くいった。

  • 時間を・人脈を「出し合う」

「急造」のチームですから、当然、予定が合わない人が出てきます。翌日・最終日は参加できないメンバーも居ましたし、昼から授業に向かったメンバーも居ます。そして、昼だけ動画に出たり手伝ってくれた新しいメンバーや、朝から動画編集に加わってくれたメンバーが居ます。

この日、必要な人を、数時間だけ、借りてくる。そんなイメージです。僕がこれまで知らなかった人とも出会えたし、そういう人たちと一緒に何かやれたのが愉しかった。

  • イメージ/やりたいコトを共有する。信じて任せる。確認する。目指せ、8割クオリティ。

新しい人に、昨日からのメンバーに、「イメージ」を共有します。締切まで、7時間。

・僕らは、何がしたいのか。メッセージは何か。
・そのメッセージを、どんな流れで表現するか
・各々にやってもらいたいことは、どんなことか。
・作業をパラレルで回す。チーム分け。

ここのシェアを疎かにすると、絶対に上手くいかない、と思います。何か道筋を引く事で、むしろそこから離陸する、新しいアイディアを誘発できます。この初めのイメージ、を前提に、プラスアルファ。

  • Commitment and "Complete Work":フルコミットする人が「全部」できることが大切

仕事にはかならず「完結性」が必要です。実は僕は、パワーポイントをいじるのも、画像を創るのも、ビデオを撮るのも、動画編集も、(クオリティは全てがそんなに高いわけではありませんが)、できます。

動画編集をしてくれた友人(集合8時間前の深夜にアポを取られた(笑))は、14時まで時間と力を貸してくれ、その後、当初の用事をこなしに。

この時、いくらそこまでのクオリティが高くとも、尻切れトンボでは、「完結した仕事」にはならないと考えます。それは単なる動画クリップの残骸であり、公開した所で、視聴者に何の貢献もできない。だから僕に、ここまでの素晴らしさを、「完結」に向けドライブする責任がある。
クオリティは低くとも、一度最後まで作ってあり、メッセージが届けば、それは「完結した仕事」になる。最初から最後まで、全員がコミット出来るわけではない時、特に「特殊技能」に長けた者がフルコミット出来ない場合、それが抜けた時に「完結性」をどう賄うか、という事を考えるのが恐らく、プロジェクトの成否を決めます。

  • 「楽しい体験」が次回のメンバーを創る。

今回コミットしてくれたメンバーは、楽しそうでした。実際に「こんな働き方味わったら就活やめたくなったわw」みたいな声もありました。ギリギリの、時間に制約された状況下で、各人が持てるリソースを出し合って頭を絞り、何かアウトプットを出そうとする様は、分配ゲームの要素は入りようがありません。パイの分け方を考えていたら、パイが焼き上がらないのは自明ですから。そして、みんなで、短時間で、質の高いパイを焼こうぜ!と頑張るのは、やっぱり楽しい事だった。

そして、今回、このプロジェクトで「たのしい!」と思ってくれた人は、次回の僕の「ねえねえ、今日の夜ひま? 実はさ…」という怪しげな誘いに、きっと乗ってくれることでしょう。ちょっとした用事ならカットしてでも。この楽しさの蓄積が、きっと次回のメンバー集めの成否を分けるのだ、と思います。

  • 明日の働き方にしては足りないところ

以上は、今回あった「良い事」だけを書きましたが、実際には、現在のアウトプットでは「食え」ません。僕は実際、こういうプロジェクトベースで、創造的で、楽しい働き方をしたいな、と思うのですが、僕自身も、周りの友人も、100倍くらいパワーアップすれば、こういう事をやって、そしてそれで食っていけるのでしょうか。

  • 明日の夢と、今日のパン

そして、こういう仕事(というか)の仕方は、実のところ、継続性に欠きます。例えばイノベーティブなサービスを考えて、創ったとして、それを日々運営する人が居なくては、成り立ちません。

ここで、こんな本の一節を、思い出します。

『お互いに「今日のパン」チームと「明日の夢」チームを時々乗り換えながら進もうぜ』と。大切なことはお互いのエールの交換。とりわけ「明日の夢」を追う人達は、「今日のパン」チームに対する感謝の心を忘れてはいけない。その心があれば、新規事業は正しく会社の期待になる。
P162/生嶋誠士郎「暗い奴は暗く生きろ」(新風舍 2007)


今日のパンを噛みしめつつ、それでも僕は、明日の夢追い人で居たいと、そう考えるわけであります。


ちなみに、他の日本人チームの動画は以下です。