大山さん、海津さんの対談・質疑応答

お二人の対談です。

海津さん「総括できずに、私は突っ走ってきたが、大山会長の話の中にかぶっている部分があった。受け入れられる事、役に立つこと、ほめられること。そういうキーワードがでてきていたので、間違っていなかったのかな、と思って、とてもうれしく思っています。
大山さんの彼らに合わせる、というのは、私の単純化・パターン化・細分化に似ている。」

大山さん「私自身も本当に共通しているなと、ここにいらっしゃるような大企業の人がやってくれれば、もっと日本の障害者雇用は発展するんじゃないかなと」

海津さん「障害者と協働したことがあります、という健常者は、うちではウチのスピード感について来れなくて、役に立たない。普通の人の『障害者との協働』は時間つぶしの相手。」

大山さん「僕は大胆に直球を投げられないので、先ほどのキーワードにあった「逞しく優しく」というのはどのようにされているのか、お聞きしたい」

海津さん「独りでやっていけないと、人間はダメだ。人を使ってできる逞しいというなかで、結局かれらは「質問がうまく」なってきたりする。兎に角考えさせる。自発的な意思決定力を引き出す。自分で選ぶ考える決める。うちでは、社長も健常者も障害者も入り乱れていて、誰が障害者で健常者で、という分け隔てをしている暇が無い。そうすると障害者が「詰まって」しまう。そこがチャンス!手を差し伸べるのではなく「どうするんだよ」と時間を置く。そうするとネゴシエーションが始まる。障害者が障害者に「お前聞いてこい」とかね(笑)でも、そこまで行っちゃったら、こいつはもう一人で生きていけるな、と」

大山さん「うちでは、ネゴシエーションでの逞しい、という大物は居ないですね〜」

海津さん「障害者って、結構『勉強になる』―こういった言葉を使う時点で見下していることになると思って嫌なんですけれども、朝から箱を260個作るぞとブンブンに回っているのを見て、学ばされる。」

大山さん「海津さんのところでは3つ
定時に出勤・笑顔で挨拶・人の悪口を言わない
という方を採用されていますね。

うちでは4つ
自分の事は自分でできる
簡単なことでもいいからやる
一生懸命できる
周りに迷惑をかけない

この約束を取り付けています。
特に周りへの迷惑はその場で家に帰します。

あまり酷いとやめて貰います。
でも、一度やったから、二度目やったから、というのではなく、
しかし、一週間に1回迷惑をかけるのが、二週間に1回になったら、
彼は成長していると考えよう。

相当な回数返されている子が居ます。20年間相当な回数問題を起こしました。
でも、今では全く問題も起こさず、むしろ新しい子に親切にしてくれる子です。
家に居てもいいのに、うちに来るという事は、
働くことで、やはり、みんなといっしょにという想いができるのかな、と。

『企業と言うのは、リハビリをする場所でもあるんですよ。
「家に帰された、でもまた会社に行きたい」
ということで、我慢をする事を覚えたり、する。
働く幸せを覚えたから、周りに迷惑をかけずやっていこうと感じる。』
こういうことを」

海津さん「豊かさとは、選択できる自由だと私は思っています。障害者はその選択肢が無い。働いてお金を手に入れると自由が生まれ、そうして責任も生じる。

うちに来た精神病の患者さんが前の職場でこういう事をいわれた
『うちの会社、みんなやさしいからね、わかっているからね、
つらい時いつでも休んでいいからね』
こういう事を言われると、休もうかな、と思う。
うちでは
『お前が休むと、穴が開くんだぜ』と言う。
お母さんが、「スワンさんに行くときは、薬飲んででも、
必死になって、迷惑かけちゃいけないと言って、仕事にでる」

在宅で働いてくれた人がいる。
パソコン使えて、時間があって、頭が動く。
その3つが揃っていて、もう一つ大切なのは
『この人生、なんとかせなあかんな、と思っている人かどうか』

「あなたは健康です、ただ、首から下が動かないだけです」
と医者から言われた人が居る。
何の巡り合わせか私の話を以前聞いていた人だった。
「仕事によって、私は生きる担保を得ました。仕事をすることによって、明日起きるんだ、そして仕事をするんだ。」

Diversityなんてのはできていないから出てくる言葉だ
仕事は自己実現だ。障害者にもそれがある、というのが知られていたか。
僕はここまですれば、障害者でも休まなくなるし、
むしろ障害者に引っ張られて我々が動いているのだ。

僕はむしろ、健常者の方が色んな意味で危ういな、と思う。」


大山さん「人間にとって働くっていうのは本当に、禅のお坊さんの言った
究極の幸せが働くってことじゃないか。
特に日本人は勤労を尊ぶ国民と言われるが、
最近聞いたのは、働くの労働の動は中国大陸から来たのではなくて、日本人が作ったんでは無いか。
人のために、動く。それが人間の意味なんですよ。
そうやって、日本人っていうのは、働くってことが、幸せなのではないか。

キリスト教では労働というのは苦役のようですが、
日本では人のために動くが働くといって、代々伝えてきたというのは、
みんながそれをかみしめる必要があるのかなと。
「働く」はそういう国字だってことを、みんな知って貰いたい。

中学生に、働くってどういうことか知っている?と聞くと、
『会社に行ってお金がもらえる』と言う。
でもそれは違う。人のために何かをやるから、お金が結果として貰えるのだ。
働くっていう字、知ってるでしょう?
人のために、動く。それが働くという事。だから、お給料が出るのだよ。」




質疑応答

■障害者に限らず、人の能力を引き出すには(遼遠質問)
特効秘策はない。類例的にパターン化することもあるが、ひとりひとり全員違う。
要諦があるからこう、ではないと思う。

ただ、ひとつ格好いい事を言えば、「愛」では無いか。
お前の事を大事に思っているよ、という信頼じゃないか。

会社に対しての信頼や、小倉に信頼を置いているというようなもの。
そこには愛が無いとだめなんじゃないか。
ひざ詰め、ということ。

それで、もし、テクニックとして人心を掌握しようとしている人がいたら
絶対に機能しないと思っています


大山さん「海津さんの愛情ということが一番大事だと思う。
私は愛情に加え、
個性っとかなんとかってのはひとそれぞれあるけれど、それより僕は
比較的誰にでもできる方法で、その人の理解力を合わせて、仕事をどうしてあげること。
そうすると結果において自分の負担の少ないかたちでできる
すると、集中してできる
結果として、能率も上がる
だから、ほめられる
そして君がいるからできた、と役に立つことができる。

結局究極の幸せにたどりつく
その人の何ができて何ができないとかはあるけれど、
その人の理解力にあわせてむしろ、ふる仕事が彼の理解力でできるか
工夫をしてあげる事が大事

そういえば、ある時に、たまたま僕はですね
JapanTimesが理化学の取材に来て、その時教えられたのですが、
理解力にあわせて理化学はやっているといったら
「そうやって手取り足取りやるのは、職人文化の日本だからじゃないか」と言われた。

ハンガリー人の記者さんでしたが、
「ハンガリーはマニュアル文化だ。
だから、字が読めなきゃそもそも入っていけない。
日本は職人文化の国だから手取り足取り、その人のレベルに合わせてできる。

そう言われてハンガリーの人に日本の文化を教えられた
そういうような日本人の文化があるのだから、
日本での障害者の雇用というのは、日本の社会が、国が、
企業にもっと期待しながらやると
より多くの人が生きられると思いますよ。

だから、そういう意味で国がもってお
日本の憲法にも
全ての国民に幸福追求の権利を与えているでしょう。
また、勤労の権利。そして、最低限文化的な生活の権利。
そういうことで言ったら、
本当に憲法を国に代わって、そう言う事をやっているのは企業じゃないか
だから、国がやるべきことを企業がやっているんだから、
もっと国が企業を大時にすると、
働く幸せみたいなものがより生まれるはずだ。


■ニート・引きこもり・売春する女子高生といった「働く」から外れている人たちをどう思うか

大山さん
「小さい頃の教育がしっかりできていればね、と思うんですよ。
小さな時の子育てを僕はまず考える必要があるなと思います。


こんな話を聞いたことがあります。
「3歳までの五感を刺激する養育をすると、先々人間の知性が伸び、その上に花が咲く」

感じる力を育てるのは3歳まで。
美しいとか、嬉しいとか。目覚めさせる。
その後は我が目覚めてくる。
三つ子の魂百までというのは、そういう事かなと思ったりですね、
その点が一つですね。

もう一つは、今そうなっているのがどうか、という事で
僕は実はカンブリア宮殿に出ましてね、
法政大学の先生の記事を見た若い青年から手紙がきました。
『僕は3年前まで不良でした。でも、そういう社会の役に立っている知的障害者の型をみて、僕もこれから社会のために頑張ります』
一ヶ月後にまた手紙が来て
『社長さん、報告します。5人の仲間が、「これからはおれも、社会の為に生きます」と言ってくれた』
大きくなっても今の物足りなさから、そういう物足りるものを求めているのかなと。
そういう事が必要なのかな、と思っています。」



海津さん「僕は福祉の専門家・学者になるとバイアスがかかってしまうので
あまり勉強しないようにしているんですが、
一般にニートだとか言われている人について思う事は
人は人を介してでしか幸せになれないんじゃないか、と思っています。
たまには打ちひしがれる事もあるんだけれど
人間は関係の中で自分があるんだと思っている
愛情だとか人間関係がまったくない状態で育ってきた人は、
愛したり、人に目をかけたりといったことを経験していないんじゃないか。
経験する事ができれば、変わっていくんじゃないか。
そうは言いながら寂しさを抱えながらニートをやっているんだけれど、

僕はヤマトで労務管理をしていましたが、あばずれを纏めるのが得意で
あんたには力を貸すぞみたいな感じで寄ってきてくれて
分け隔てしないですし、愛情みたいなのがキーになってくると確信をしていますね。」




■人に一番最初に相対した時に、常に思っていること、視点を、教えて頂きたい。
例えば、名刺交換をした時に、どういう事を考えながら人として向き合っているのか教えて頂きたい。

海津さん「深遠な事は言えないが、一期一会なんですよね。それだけです。
僕は人間脳味噌が二つあったらこんな強い事はない。
4倍の力があったらオリンピックでれますよね
相手がいるだけで、全く違った発想で世界が見えるじゃないですか。
相手がいることが凄く僕にとっては力なんですよね。
こう思うけどどう思うかな、というのが財産なんですよね。
N=3でいいから、外に行って聞けと私は言っています
思い込みだけだとはなくそみたいな商品が出てくるんですよ
自分の興味がないものが世の中には腐るほどいて、
それだけ違うものの見方をする人がそんなにいるってことじゃないですか。
違う方と巡り合えたのは全部財産で、障害者だって全部そうです。
それだけは僕ははっきり言えます。」


大山さん「76歳になって、こういう問いにやっと答えられるのですけれども、
僕は、禅の坊さんの話を聞いてからこういうスタートをしているんですけれども
人の為に一生懸命働くという事で
自分がすごくラッキーな人生を歩ませて頂いたなと
人の為に一生懸命働く事が、自分にも幸せな人生を生きることになる

役に立つほめられる必要とされるというのは、
結果において愛される事ですよね。

周りの人に、相当な応援を頂いています。
企業の力じゃなくて、周りの力で理化学は成り立っています
川崎の方に早稲田の方と繋がれて発展したり。
人の為に生きると、周りが助けてくれます。
人の為に、というのは偽善的に聞こえるかもしれないけれど、
それは間違いない、ということを、76歳の僕はお伝えしたいです。」



■今後の事業の事、今後のご自身のことについて、教えて下さい

海津さん「4/1に新しい会社を吸収合併した。
農協のシステムは崩壊していて、我々ヤマト運輸というインフラを持っていますので
障害者にいいものを提供して、それを売って貰うという会社なんですけれども、
まず、農家の方に悪い人じゃないよって事を伝えて(笑)
畑行きましょうからはじまって、たくあんが出てきて、一緒にむしって。

自分たちの強みを生かして
小倉さんと言う方は、非常な教えを会社において言ってくれていて
「会社の経営は黒字にすること」
「黒字とは経費より収入が上回ること」
かくっとくるような当たり前のシンプルな事を残していってくれて、
そうして考えたのは、
社会起業としてふさわしいものを売って、
世のため人のためという信念を持続していく事が大切で、
そのためには正しい倫理感といったことが大切だと思っています。

基軸力と良く言っているんですが、ぶれずに一歩一歩行っていこうと思います。

我々13年前にスワンを始めたんですが、
13年も経って、まだスワンが新しい、と言われるということは、
まだまだ日本が変わっていないんだなあ、と思います。
みなさんこんなハゲでもできる(笑)んだから、パクってもらって
どんどん新しいことやっていってほしいですね」


大山さん「働くということが究極の幸せですよね。
恵比寿様も実は足が悪い、足の出ない神様だと神話辞典には書いてあります。
知的障害者の方々のお陰で、私の今の人生があります。
新聞では、知的障害者だから事件を起こすなんていう論調もありますが、
私としては逆です。
工場で知的障害者が働いてくれて、逆だという事を教えてくれました。
障害がどうこうではなくて、まともに生きられるような環境を、大人は作っているでしょうか。
まずは障害者が事件を起こすとしたら、周りの大人のせいです。

もう一つ、
三歳までの教育にともすれば
保育園にあずけたりするのは
女の人には申し訳ないけれど、大事にされている
やさしい、きれい、そういう感性をお母さんに育ててもらえれば。
そういう理念で、きっとぱすができたんですよ。

外の風景を見ながら、小鳥が鳴いている、というのを
その子たちなりの理解力で描いてもらいたい
それを恵比寿様が与えてくれたのかな

それを家の中で、窓ガラスで好きな事をさせながら、ほめながら
会話しながら、親子のきずなを3歳までにしっかりつくる。
そういう子育てに、キットパスを役立てようと思っています。」