デマの広め手に、なるのをやめよう

  • 善意のデマが、不安を煽る

地震発生直後から、阪神淡路大震災の際、神戸に住んでいたこともあり、そして、自衛隊の炊いてくれた温泉や、近くの仮設水源から水汲み・水運びをしたものとして、多大な関心を持って、Twitter始め、UST、各社メディア、海外メディア(状況の整理は海外メディアの方がされています)、政府・東電の公式発表等、強い関心と悲痛の中、見ておりました。

Twitterは、情報の速効性という意味では非常に有用なメディアなのですが、このTwitterや、メーリングリストで「善意で広められる、悪質なデマ」が蔓延しています。

例えば、ある人物が震災直後、震災の悲惨さが分かる前に

地震が起きた時、社内サーバールームにいたのだが、ラックが倒壊した。腹部を潰され、血が流れている。痛い、誰か助けてくれ。ドアが変形し、腕しか動かない、呼吸ができない。助けを呼ぶことができない + 住所

というデマを流しました。「善意の誰か」は数百名にものぼり、実際に警察・病院に連絡した人多数。本人が居ない、そのツイートに書かれた住所には、何台もの救急車が急行したそうです。

  • デマ一覧

こちらのURLにも詳しいですが
http://www.yukawanet.com/archives/3598689.html

・関東に夜中大きい地震がくる
・富山県内で13日大地震が発生する
・只今、近畿のプレートが小さくなっている模様。次は近畿に大きな地震が起きる可能性が非常に大きいので明日、明後日は注意してください。
阪神大震災の際ははじめの地震から三時間後に一番強い地震がきた
阪神大震災の際には女性暴行が増えた
コスモ石油の爆発による有害物質流出
福島原発「メルトダウン」まで秒読み
・前期の東大で合格した親戚が宮城で被災。入学に必要な書類の提出期限は14日。にも関わらず対応ナシらしい

などなど、多種多様なデマが、短期間で流れました。
私も阪神淡路大震災を体験し、そして現在も福島に、仙台に友人が居り、こういったデマの一つ一つに、心を痛めています。

  • 感情的な反論は、音も無く無視する


こういった、デマの警戒情報を流している人たちは、“善意でやっている”事が多いため、さらに問題があります。デマを指摘すると「デマという証拠はあるのですか」と開き直られ、修正が成されない、といったことがよくあります。

私もTwitterで「デマ一覧」「不要な不安を煽らないで下さい」というツイートを書いたところ、ホリエモンにRTされて以降、たくさんの人から賛同のメッセージを頂きましたが、中には「本質は注意喚起。注意を煽るのが悪いのか」「デマという証拠はあるのか」といった、信じがたい反論もありました。

こういった非常事態にこそ、

    • 偽情報で、現場の人々の不安を煽り、冷静に対処すれば対処できるはずだった事の精度を下げるということ。
    • 人々に不安と疑心暗鬼を募らせ、人々が連携して災害に対処するのではなく、人々を分断すること。

要するに、パニックを喚起するような情報の広め手になるのは、避けなくてはならないのですが。*1

ここで明確にしておきたいのですが(現時点で)証拠・確証のない情報がデマ です。

だから、結果的にデマ情報(根拠なく、そうなる、と騒いだ物)が本当になることはあります。それどころか、デマが現実を創りだすこともあります。
例えば

豊川信用金庫事件

など。

そしてポイントなのは、こうした現実を創ったデマは、後から見れば「正しかった」のですが、同時にそのデマが広まらなければ、悲惨な現実は起き得なかった、という事です。

また、デマではない証明 といったものは、ありません。
「デマではない証明」を要求するというのは、

あなたに街中でいきなり声をかけて
「あなた、犯罪者ですよね?」と聞き
「犯罪者ではないという証拠がありますか?」と畳み掛け
「その証拠がないなら、あなたは犯罪者では無いとはいいきれない」
「犯罪者の可能性があるので、みんなに警戒してもらわないといけないですから、Twitterで情報を流します。もしあなたが犯罪者で、万が一被害に合う人が居るといけないので」

このくらい、異常なことなのです。
「デマではないという証拠がない警戒情報」を流すのではなく
「証拠・ソース・発言者責任つきの情報」だけを流し
「出処の分からない情報」は、自分の所で止め、流した誰かに訂正するようメッセージを送りましょう。

110313 16:13追記

僕は、第一原発から30〜40Kmあたり(もう少し遠いかも)に住んでいますが、デマの横行で、避難所や給水所などが情報で混乱しています。

例えば、
「放射能に汚染された人が来るから、遠くに逃げろ」と、東京電力が言ってるとか、
今夜停電するとか

僕自身、今現在、南相馬に住む友人、火力発電所近くに住む釣り仲間、知り合いの漁師さんたちと、全く連絡が取れない状況です。

悲しいことになってしまいましたが、情報パニックでさらなる被害を増やさないためにも、遼遠さんやふろむださんのような、冷静に状況が判断できる方々、または、被害が大きくない地域の方々が正しい情報を流していただけることを、切に願います。

ネット回線も東北は不安定なので、Twitterなどで、周りの方々に、正確な情報だけを流すように伝えていただけると幸いです。

こういった、現地で実際にデマで混乱・困惑している方の声を、併記しておきます。

  • デマに騙されにくくなるには

こういったデマに踊らされないために、そして、広め手にならないために、どうすればよいのでしょうか。

    • 「助けて下さい」は“匿名の誰か”に言わない

「誰か助けて」というツイートも、よく観ます。しかし私は「影響力の武器」という本に書かれていた、心理学の実験を思い出してしまいます。

不特定多数を相手に「誰か助けて下さい」をやると、「自分以外の誰かが助けるだろう」と「ほぼ全員が」考えるため、結果として助からない可能性が高いのです。

だから、「誰か助けてください」は多分助からない。Twitterで助けを求めるなら【拡散希望】ではなく、現在アクティブで具体的なアクションがとれ、助ける力と意欲を持ってそうな人に直接@mentionするのが確度が高いと思われます。

もし、あなたの所に【拡散希望】のヘルプが来たら、ただRTするのではなく、消防、救急、チカラを持った誰かに、直接お願いをする。その方が助けたい誰かが、助かる確度が上がります。

拡散させて、効果がありそうなのはおそらく「情報を下さい」であって、「気をつけてください」ましてや「助けて下さい」ではない。そう思います。

    • 公式ソースを観に行く

「公式」=「真実」ではありません。ありませんが、出元の分からない情報よりは信ぴょう性が高い。

阪神大震災の際ははじめの地震から三時間後に一番強い地震がきた」という情報では、ウィキペディアを観さえすれば、

ウィキペディア 兵庫南部震災
最大余震 1995年 1月17日 5:50、M5.2、震度4

と書いてあります。余震の中で最大の揺れは、ウィキペディアによると、4分後です。

一方、文部科学省地震調査研究推進本部のレポートでは

文部科学省地震調査研究推進本部のレポート
最大余震は本震発生から約2時間たった17日午前7時38分、本震の震源から北東へ約40km離れた余震域の北東端に起きました。Mは5.4で、本震のMより1.8小さくなっています。

となっています。どちらにせよ、3時間後というのはデマですし、「3時間後に来ると思ったらこない。いつ来るのか分からない」という事に、無駄に精神的なリソースを使わせずにすみます。
(戦場の兵士にとって、「●●まで待機」は耐えられても「別命あるまで待機」というのが一番厳しいそうです。)

Twitterを被災地遠くからやる暇人に言われなくても、何度も揺れているので、現地の誰もが最低限の警戒を、既にしています。

ちなみに最大余震については

最大余震は多くの場合、内陸では本震から約3日以内に発生しています。海域ではこれより長く、約10日以内

ということです。

コスモ石油の件に関しましても、コスモ石油HPで明確に否定されています。一方、東京電力の「節電のお願い」に関しては、公式HP上で明確に述べられていますので、正しい情報です。

阪神淡路大震災の様子は「平成7年 警察白書」
を見ると、

「平成7年 警察白書」
犯罪の増加・治安の悪化に備え、通常の5倍の機動力で対応し、

被災地の犯罪情勢は、オートバイ盗、乗物盗が増加した一方、侵入等が激減し、全体としては例年に比較して平穏に推移した。

とあります。(「事件が頻発はデマです」という明言に対し「一件でもあった」かどうかで反論するといった論理的齟齬も良くみられました。「一件でもある/あったかもしれない」には、誰も反論・否定できません。)

Twitter上の非常事態では「何が言ってあるか」より「誰が言っているか」に注目するのもよいでしょう。

以下は私見ですが、こういったソースが有用であるように感じ、活用しています。

東大原子力系卒業生および有志協力チームから原子力まとめ
総務省消防庁
NHK_PR
NHK_科文
ホリエモンのTwitter
原発関連では、東京大学大学院理学系研究科教授の早野氏のTwitter

    • 自分が諦めることを考える

それでも、分からないことが幾つもあります。例えば、原発原発を推進したい側と、原発を廃止させたい側が居ます。そのため、推進派はトーンダウンするし、例えば廃止派からは、この危機に乗じて誇張された危機が煽られます。

こういった時は、一つは「身近な“大丈夫”と比較する」といった事が考えられます。今回検出された放射線1025マイクロシーベルト/時(1.025ミリシーベルト)だそうですが、例えば、レントゲンやCTと比べてみます。

CT検査では、頭部CTが30000〜70000マイクロシーベルト
腹部CTが30000〜50000マイクロシーベルト

だそうです。すなわち、30〜70時間浴び続けて、CT検査1回分の放射線量である事がわかります。

11/03/14 18:10追記

こういうことを知っておくと、

福島原発>計器メーター振り切れ、放射線計測不能
http://www.asyura2.com/11/genpatu7/msg/110.html

使用した計器は「BEIGER COUNTR DZX2(上限は1000マイクロシーベルト/時)」と「VICTOREEN 209-SI(上限は10ミリレントゲン/時以上)」及び「MYRate PRD-10/1(上限は9.9マイクロシーベルト/時))の3台。上限を超えているため、正しい値を確認することはできなかった。
 
原子力問題のスペシャリストでもある広河隆一さんによると、2月末のチェルノブイリ原発取材で、事故炉から200メートル付近で計測した値は4ミリレントゲン。事故炉から­4キロ離れた、プリピャチ市で計測した値は0,4ミリレントゲンで、いずれも今回の計測が上回っており、非常に高い水準にあるという。

上記記事のように何故か、*2、政府発表の1025マイクロシーベルトを浴びれば壊れる計器ばかり持って現地入りしたジャーナリストの方々に、無駄な危機を煽られずに済みます。


一方で、もう「良く分からない」事がたくさんあります。その時は、自分ができる行動から考えます。例えば、私は今、東京に居て、新幹線は動いているようです。福島原発の事を考えると
・新幹線で逃げる
・逃げない
のどちらかの選択肢しかありません。

僕はたぶん、公式発表で「逃げろ!」と言われない限り「いま、原発がヤバいらしい」「メルトダウン秒読みらしい」と言った情報では、動かない。逃げないだろうな、と思います。

逃げない事が決まっているなら、公式発表ではない何かに一喜一憂するのは、あまり意味が無いことなのではないか。そんな風に「ある種のあきらめ」を行う事で、精神が安定するように思います。

    • 諦めない善意が、デマを広める。

こういった災害時に、私たち一般人の出来ることは、驚くほど少ないのだと思います。今、自分の面倒を自分で見られない組織が現地にヘルプに行けば「被災者が増えるだけ」です。要するに、邪魔なだけです。

同様に、「具体的な宛先」や「公式の事実」に基づかない、注意喚起や、流言蜚語も、邪魔なだけなのだと思います。

我々にできるのは、

・「顔の見えない誰か」を諦めて、「顔の見えるあなた」を支援すること
・目の前の、あるいは現地で被災している、困っている友人に具体的な支援をすること(共感する、慰める、励ます、傍にいてあげる、代わりに情報を検索する、送ってあげる、片付けを手伝ってあげる、泊めてあげる、暖かい飲み物をあげる、充電させてあげる)
・具体的なサービスを創ることのできる、誰かを応援すること。
・バックグラウンドのきちんとした組織を通じて募金すること。
・長期戦である復興の間(我々にできるのは、むしろこっち)この震災を忘れず、宮城産・福島産のものを少しでも購入する。

そしてなにより
・無駄な流言蜚語を流さない
これだけではないでしょうか。
無駄に騒ぐことで事実は「CT検診1回以下の放射線量」なのに、“その地域は放射能に汚染されている”なんて流言が広まったら、どれだけ経済の復興にダメージを与えるか。そんなところにも、想像力を持てると良いのかな、と思います。

余談ですが、この辺も根本的な誤解・誤用があるので追記。

・放射線:極めて簡単に言うと、高速度の粒子。超ちっちゃい銃弾みたいなもの。超ちっちゃいので、ダメージは少ないが、たくさん受けると人体もヤバい。実態は高速のヘリウム、高速の電子、電磁波など。
・放射能:その粒子を発射する能力。もうちょっと正確に言うと、放射能をもつ物質というのは、不安定で崩壊する。その崩壊する時に放射線を放出する。
半減期:簡単に言うと、放射能を持った物質が半分の量になるのに必要な期間。崩壊しながら放射線を撃って、放射能を失う(別の放射性物質になる場合もある。不安定なので壊れて→安定な物質になるというのが基本。)
・放射性物質:放射能をもつ物質の総称。

また、価値ある具体的なサービスとは、こういうものです。


Google Crisis Response(消息情報などがまとまっています)
SAVE Japan(TwitterのHashtagsが一覧できます)
帰宅困難者のためのGoogle Map上受け入れ先まとめ
Google Earth + 被災地の衛星写真


こういったもの、応援できる、支援できる顔の見える友人を助け合いながら、できないことを、積極的に諦めて、できる身近な人たちへの貢献を頑張って、あとは、ストレッチや、身体をゆっくり動かし、伸ばすこと。深呼吸をすること。
そういう事もいいですね。

  • このことを一言でいうと、要するにきっとこう言うことなんだろう。

http://twitter.com/#!/hkubota1016/status/46560972474810368
緊急時に、何もしないことが最良でありうることを認め、
何もできないことを受け止め、
何かした気になることを戒め、
何かしないと不安なることと戦うことの別名を、祈ると呼ぶ。
僕は宗教者ではないけど、今回ほど祈ることの意味について考えたことはない。

*1:もっとも、自分がこの非常時に、やってはならない事をしたということを「認めたくはないがゆえに開き直る」ということは、人間によくありがちな事ですので、それ自体は、仕方がありません。

*2:1レントゲンは10ミリシーベルトとして換算

株式会社イキゴトを設立しました/273097

前回の記事「答えるに値する問いをつくる」
http://d.hatena.ne.jp/starbow/20100304
から、はや数カ月。

当初作ろうと思っていたサービスは、2つの「問い」へと集約され、
紆余曲折を経たのち、気がついたら会社になっていたのでした。

株式会社イキゴト といいます。

  • Present Thinking Companyでありたい

どんな、会社でありたいのか。
それは「プレゼント・シンキング」という考えかたに集約されます。

それは、贈りものをおくるように、社会に事業を届けたい、ということです。
たいせつな人に贈りものを贈るとき、わたしたちは、どんな風に考えるのでしょうか?

    • とらえる

たいせつな人への贈りものであれば、ただ記念日だから、とか、ただ貰ったからお返しに、とか、そういう贈りかたは、しないはずです。

贈りたい、と思うから贈る。
まずは、自分自身の感情を正しくとらえることが大切だと思います。

    • つくる

次に、何を贈るのか。それは、自分の贈りたいものを贈るのではなく、
相手の喜ぶものを、贈りたいと思うはずです。

だから、贈り先への臨場感が、大切だと思っています。
臨場感とは、「自分ごととしてとらえる」ということです。

「社会をなんとかしたい!」それもいいでしょう。
ですが、その「社会」って誰なんだろう。という「誰」に
臨場感が持てないとしたら、独りよがりな社会変革になってしまうと思います。

だから、自分がとらえられる範囲で、まずは「一人のために、つくる」ところから、私たちははじめたい。

    • さしだす

そうして、たいせつな人への、贈りものができたとしましょう。
その贈りもので、喜ぶのは、一人ではないかもしれません。

もっと多くの人の幸福を創り出せると思ったなら、
もっと多くの人の前に、さしだしてみます。

それを通じて、心と心がつながる事業をやっていきたい。

  • 事業によって心と心をつなぐ

全てのものは、心から出て、モノや、サービスや、情報や、コミュニケーションを介して、また心へと入っていくのではないでしょうか。

つまり例えば、
車をつくっている人は、車という物体を届けているだけではありません。
「こんな車を運転したら楽しいよね」というアイデアを、車という形をとって届けています。

わたしたちは、
「心から、事業を介して、そしてまた心へ」を、意図的にデザインしていきたいと思っています。

具体的な事業領域としては

まずは、社会的貢献(ソーシャル)とソーシャルメディア、
二つの「ソーシャル」の交叉する場所で、人々の想いと想いをつなぐ
仕事をしていこうと思っています。


・何か「良いこと」をしたいという個人と社会的企業NPO・組織団体等を
つなぐウェブ上でのコミュニティをつくるためのサービスをつくること

社会的企業NPO・組織団体等の試みを、ソーシャルメディアの活用支援を通じて、個々人とつながりを創ること

この2つのアプローチをベースに動いています。


どちらにせよ、「人々が自然な情動に従って生きる」こと。
自然な、より良くなればなあ、という気持ちに答えること。
例えば地球や社会に対して良いことをしたいという個人が、気軽に参加できて、楽しめて、思いを伝えられる場をつくること。

そういう事をやっていきたいと思っています。

  • 口だけではなく、哲学だけではなく、実装を大切に

実際に最近では
全国から集った「志民」が地域を良くしようとする
「ローカルサミット」という、3日間に渡る「サミット」を
お手伝いさせて頂きました。

第三回になるローカルサミットは、小田原で開催され、

田原市長・加藤憲一さんから、
マザーハウス副社長の山崎大祐さん、
ユナイテッドピープルの関根健次さんに
元三菱電機アメリカ会長の木内孝さん
元サンヨー会長の野中ともよさんなど、
11の分科会で80名を越す、登壇者の方々、300名を超える参加者の方々で
大盛況に終わりました。

また、企業との協働では、
日本の未来を考えた素晴らしい製品の数々を創って居り、それを日本の若者にもっと届けたい!という大企業様と、どのように心と心を繋ぐマーケティングが可能なのか、プロジェクトが走っています。


冷静に自分たちを眺めると「ヘンな会社」なので、
また、時間を見つけて、面白い記事を書いていきたいと思います。

ペンキを塗ったら壁が■■■■話とか、
オフィスに■■器が導入された話とか、
弊社iPadの上に、チオ■■ドリンクが山積みされていた話とか。

どうかよろしく、お願いいたします!

答えるに値する問いをつくる。/251372

現在、友人たちと新(ウェブ…になるのかな?)サービスのリリースを計画しています。それは、「僕が、イキイキと生きるには?」という聊か漠とした問いから、あるいは、「ちょっとしたミニワーク・ミニプロジェクトを支援するにはどうしたらいいんだろう」という問いから、生まれたものでした。

これまで、机上でディスカッションを何度となく重ね、エンジニアの仲間がエレガントなシステムを、デザイナーの仲間が明るくポップなデザインを行い、後は細部を詰めて、リリースするだけ、という所に至りました。

しかし、作ったサービスは、頭の中で思いついた時は上手くいきそうに思ったのですが、実際にモノが出来て、自分達で使ってみると、企画者の、発案者の、プログラマの、デザイナの、自分達ですら、「すぐ使わなくなる」事があきらかになりました。

そこで、描いていた理想を、取ろうとしていた手段を、もう一度問い直すべく、私たちは「人の声」に示唆を求め始めました。

「人が何かを【やれる】」とは、どういう事で、どういう時に可能なんだろう、という問いだけは胸に、人に興味を持って、12人のインタビュー協力者から、一人2時間以上も貰って、話を聞き続けました。興味と疑問に、率直に答えて貰いました。

今日のエントリは、その12人の人生から知恵を得たプロセスを、ご紹介したいと思います。以前 http://d.hatena.ne.jp/starbow/20090920/1253458969 で触れた、IDEOの手法を下敷きに、くらたまなぶの教えと、自分達の方法論を上乗せした。そんなプロセスです。

  • 前提確認・目的/流れの共有(30min)

プロジェクト全体の目的の中での、今回の会議の目的

宣言と応援によって、個人プロジェクトを支援するというコンセプトの元、作成したウェブサービスは、メンバーである我々自身にとっても、使いづらく、また、使わないものになってしまった。そこで、理想やコンセプトを取っ払い、ゼロベースで「顧客の声」を聞き、人というものを知ろうと、トータル12人の深いヒアリングを行った。
本会議では、このヒアリングで得られたデータを基に、声を聞いた他者を自分たちに「憑かせる」事を通じて、我々が取り組むべき使命を鮮やかに描き、サービスの核となるべきコンセプトを設定し、そこから、実現可能性と採算性を意識したサービス設計を行う。

と、

ゴール

各自が理想に感じる使命を発見し
意味あるサービスコンセプトを発明し
具体的なサービス設計が行えていること

を設定/共有し、
本日、どのような意図で、どのように会議を進めていくかを共有しました。

ちなみに、実際にかかった時間は以下の通り:

1. 前提確認・目的/流れの共有(30min)
2. 個々人が持つ情報の共有(200min)
3. 洞察と昼食休憩(100min)
4. テーマ出し(120min)
休憩(20min)
5. テーマの整理と構造化(90min)
休憩(20min)
6. コンセプト(90min)
休憩(20min)
7. コンセプトの説明と投票(40min)
休憩(20min)
8. 解決策のブレインストーミング(30min)

  • 個々人が持つ情報の共有(200min)

共有―Downloadと呼ばれるこのセクションでは、情報というよりも、インタビューに応えてくれた「人」についてのイメージを共有する、もっと言うならば、「自分の中に、インタビュイーをつくる」のが目的です。

今回は、インタビューのログを基に、インタビューをした人が、インタビュイーについて、どのような人で、どのような気持ちでどのような行動をとったか、という教えて貰った「ストーリー」を話し、聴き手がその人の事を「頭と心に入れ」ながら、ポストイットにその内容をメモする、というような形で進めました。

この時、「女子大3年生」「〜〜で優勝・MVP」と言った、事実レベル・属性レベルの記述は全く役に立たず、「事実+行動」「事実+気持ち」「行動+気持ち」といった、要素が組み合わさった記述が以降の洞察やテーマ決め、アイディア出しに有用でした。

例えば、
「応援してくれる人が居たから、頑張れた」「優勝したら、自分の事を認めてくれる人が増えて、嬉しかった」「学内の新聞に載ったけれど、それだけでは満たされなかった」「むしろ子供と触れ合い認められる方が、受け入れられている気がした」
といった記述形式が、後の示唆出しに役立ちました。

予想外に、あるいは予想以上に時間がかかってしまったのがここですが、よく考えれば、インタビューログだけで40000文字もあるログを、そう簡単にシェアできるわけがなかったですね。

  • 洞察と昼食休憩(100min)

洞察―Insightと呼ばれるこのセクションでは、前述のポストイットを基に「洞察=新規性・驚きのある事実の仮説」を出していきます。今回はまずは、インタビュイー12人を、一人づつの中で洞察を出していきました。

この時重要なのは、それが「仮【説】」であるという事です。「家庭環境」「達成欲がある」といった書き方、いわばラベルを貼るような書き方では不十分(「説」でない)で、「自分に似たマイナス部分を持つ人に惹かれる(のでは?)」「決断に際し、外部の価値観を重要視している(のでは?)」というレベル感での「洞察」を出していきます。

出し終わったら一度、各人が出した洞察の発表と説明を参加者全員に行い、どのような洞察がここまでで出たのか、情報を共有します。

  • テーマ出し(120min)

次に、先程の洞察をより一般化した、「テーマ」を出します。今回は、インタビュイー12人の複数人に跨って出せるテーマを出していきました。これも、仮「説」になります。

例えば、「何かが「ない」から頑張れるという事があるのではないか=愛や評価を取り戻すために頑張るのでは?」「人に与えたい、他人の夢を支援したいという気持ちがある(のでは?)」「セーフティネットがあるから、チャレンジできる」といったものです。現実には、前段階での「洞察」と同時に行っても問題はありません(特に、複数人を直接インタビューした人は、始めから複数人の繋がりが見えていたりしますよね)。

  • テーマの整理と構造化(90min)

ここで、多くのテーマが出たので、出たテーマをPost-itに書きうつし、テーマだけを眺めながら構造化・整理を行いました。

人の行動には、自分の内から出るもの、外部からの要求に応えるもの、それらが重なるもの、といった、より大きなフレームを設定して、出てきたテーマを整理する事ができました。

ちなみに、この辺りで疲れも限界に達し、また、テーマが抽象的すぎて(ここと前段階が元々、このプロセスで一番抽象的になる所です)、纏まるのか?という不安がメンバーの頭を巡り、もうちょっと心が弱ければここでお開き・解散にしていました(笑)


  • コンセプト(90min)

ここでは、これまで挙げた、洞察とテーマに対し「機会領域」を探ります。いくら哲学的にあるいはマーケティング的に素晴らしい洞察を出しても、それが実現可能なものでなければ意味がありません。そこで「いかにして我々は、〜〜〜をするか」という問いを、ここで幾つも立てる事を目標とします。

出てきて、整理されたテーマを見返しながら「いかにして我々は〜(How Might We...)」という問いを、幾つも作っていきました。例えば、「外部のノイズ・社会の要求や流れについ載ってしまう」というテーマと、その下に貼られた洞察、そしてそれを裏付ける事実を眺めながら「いかにして外部の価値観を明確にするか?」という問いを立てました。

  • コンセプトの説明と投票(40min)

これらを各人が出して、ポストイットに書いて貼った後、各人が自分の出した問いの背景を説明します。例えば「いかにして外部の価値観を明確にするか?」という問いであれば、

「外部の要求、価値観、見栄、レール、期待に沿って、つい動いてしまう人は多い。しかし、そう動く人は必ずしも外部の価値観を適切に理解しているとは限らない。例えばサークルで「凄い先輩」みたいに後輩に祭り上げられてしまった人が、『先輩なら凄い所に就職できそうですよね!楽しみです!!』みたいな声に押されて、世間的に『もの凄い』所に行けなければ、本当はちょっと行きたいと思っていた『世間的には凄くない』会社に行くパスを自ら閉じ、極端に走る―例えば「行きたいと思っていないのに」起業やベンチャー―事があり得るのではないか(自分が本当に行きたいと思ってベンチャーや起業を選ぶというのとは違う、いわば消極的な起業/ベンチャー)。しかしその時、例えば後輩はそんな事を期待していただろうか。後輩の言う「凄い」は、先輩にとって明確だっただろうか。いわば「読み合い」のような所があって、答えなくても良かった期待に、答えていて不幸になると言う事があるのではないか。」

という背景を持つ「問い」であるわけです。
出てきた数十の問いに対し、一つづつ説明を加え、背景を共有します。

そのうえで、今回は投票という形で、一人一問5点づつ持って、「今日考えたい問い」を選びました。

  • 解決策のブレインストーミング(30min)

今回選ばれた問いは二つ。

    • 「いかにして与えたいものを与えられる環境をつくるか」
    • 「いかにして外部の要求に対して、自己の魂を載せる事ができるか」

これらについて、15分づつ、ブレインストーミングを行いました。
前者からはさらに、「体験が体験を創る」=「何かがある事で、素敵な体験をした誰かが、その何かを伝える事で、別の誰かにも素敵な体験をして貰いたい」という事が「与えたい」動機ではないか。という仮説が。

後者からはさらに、「外部の要求というのは手段/現象レベルのもので、それは往々にしてつまらない。魂を載せられない。」「しかし、目的レベルまで戻れば、誰もが同意できる何かがある事が多いのではないか。」「そのレベルにまで戻った上で、その目的達成のために動く事ができれば仕事に魂を載せうるのではないか」という仮説、また、魂が載っているというのは、「必ずしも信じ切っている事ではなく、一度疑った(=目的レベルに戻った・目的を問い直した)自信があるものではないか」という仮説を出す事ができました。

サービス等の詳細については、リリースを以て、お知らせしたいと思います★

人が知りたい /250050

やっぱり、人が好きだ。
人の話を聴きたい、人を知りたい、理解したい。
と、想うようになりました。


そこで、知り合いや、友人に、時間をとってもらって、
一人2時間以上かけて、ゆっくりと、「あなたのこと」を教えて貰いました。

まだ、4人ですが、そこで見えてきたものがあります。

否定せず、余計な、言いたくなってしまうアドバイスをせず、
きちんと聴く。
そして、ただ知りたいと思った事を、先入観抜きで掘り下げていく。


そうすると、これまで知らなかった
「ふつうの」人の、背景が、人生が、ストーリーが、胸を打ちました。

「ふつうの」人の中に、膨大な物語、考え方、転機があって、
きっと誰かを「浅い」と思ったなら、それは、聴き方が浅かったのだなあ、
と思うようになりました。


そのような中で、視えてきたもののなかに「冷静と情熱の間」があります。
皆さんにも、少し、シェアをさせてください。人の話を聴く中で、見えてきたものです。


「言霊」というものがあります。
面接などで受け答えする中で、「言霊が載った」時は、とても上手く行きます。



私自身が常に言霊を吐けるか、と自問自答した時、
時には吐けるが、時には吐けない。そう感じていました。

言霊を吐くには、信じる熱意が必要です。


しかし、

自分の思考が、疑いうるものであり、仮説に過ぎない、
今の自分の狭い狭い視野から見た妄想にすぎない、という理解は、
思索を前に進める為には絶対に必要です。
いやむしろ、これまでの自分の思考や信念に、逆らっていく事こそが
思考であるとすら考えます。

思考が疑いうるものだ、現時点の仮説に過ぎない。
私が吐く言葉は、将来は変わるだろうし、変わって居なければややもすると成長が止まっている。
その理解があって、それでも、「信じて、言葉に言霊を載せる」ができるのだろうか。
その強さが私にあるだろうか。

といった事を考えました。


疑いを経ず、検証を経ず、想いを載せると、
タダのアツくてバカなやつになってしまう。

疑って、穿って見て、懐疑し思考すると、
今度は自信も熱意も無いやつになってしまう。

僕は、前者から後者へ、後者から前者への
螺旋階段を登っていて、

今現在、ほどほどに、ちょうどよい、
後者から前者の、中途に居る。と思っています。

そして、
この後、前者にもう少し振れて、また後者に戻っていくのだろう。と。



ここに至り、相対する二人の、
登った螺旋階段の高さと、冷静と情熱でどの位置に居るかが、
お互いへの見方に影響を与えるのでは、と考えます。


インタビューの時、ある男性はこう言いました。
「大学一年生で、この団体に入ろうって思ったのは、
こんなビジョンがあります、とプレゼンしている団体の代表が、
熱意や壮大な夢を語りながらも、なんだかもがいている所があって。
それで、何か自分も一緒になってやっていけるかも、と思ったんですよね」
と。

そこにはきっと、当時「冷静タイプ」だった彼の心を掴む何かが、あったのです。


冷静タイプに振れている時、情熱タイプに振れている人を見ると、
バカだと思えます。あろうことか、足を引っ張りたくさえなります。

情熱タイプに振れている時、冷静タイプに振れている人を見ると、
どうしてここまでネガティブになれるのか、理解すらできなくなります。

更には、華々しい成功を収めると、情熱タイプに振れていき、
地獄の失敗を味わい内省する時、冷静タイプに振れていくように感じます。

行動して、覚悟を決めて、積極性100で前に出て、
成功して、失敗して、内省して、改善して、というサイクルを、
冷静に情熱にとダイナミックに回りながら、成熟していく。

そしてこの事を、メタで捉えられていれば、
情熱家には、成功の為の視点を提示したり、
冷静家には、行動の為の一歩を提案したり、
できるんじゃないだろうか、と。
そしてこれがきっと、心の中の平和。
似てる/似ていない、という箱から出たということ。

相手の状況を捉えて、どこに居るのかを理解しようとして、
そしてもう一周、を支援できるだろうということ。


このようなサイクルを、人間と言うものを、知る事が、
冷静と情熱の変曲点を乗り越える事を支援することこそが、
もしかすると、僕のやりたい事かもしれない、と思うようになりました。

クルミドコーヒーに行ってきた! /240684

及部君の紹介で、クルミドコーヒーに、学生8人で押しかけて(!)店主・影山さんのお話を聞きつつ、クルミドコーヒーの、コーヒー・軽食・デザートを楽しませて頂きました。

  • クルミドコーヒーって?

このカフェをボクらの娘たちのために作ろうと思う。
ボクらの娘が、もう少し大きくなって
楽しめるカフェを作ってみたくなりました。
たとえ潰れても、やってよかったと思えるカフェ。
わたしの街にも、こんなカフェがあればいいと思えるものにしたい。
こどものカフェといってもテーマパークや幼稚園や、
おまけをくれるカフェではない。
大人もこどもも、お年寄りも、静かでくつろげるカフェ
こどもをとりこめば大人がついてくるというのではない
本当のこどものカフェを、
愛娘のために作ろう

JR西国分寺駅南口を出て徒歩1分。
見えてくるのは、クルミドコーヒーとはためく旗。
「愛娘のための」喫茶店がここにあった。


今回は、2歳の娘が居るという影山店主に、お話を伺った。

  • お父さんが、本気を出して夢を追いかけたらこうなる

元マッキンゼーのコンサルタントで、ベンチャーキャピタリストな店主・影山さんはだけど、お話の最中、ずっと、父親か、秘密基地を作る少年のような面持ちだった。
父親が娘を「効率的に育成」したりはしないように、愛情と手間暇をかけて、お店とコーヒーを作っているみたいだった。
少年が自分の秘密基地を、最高の場所に仕立てるように、「普段はこんなに説明しないんだけどね」という、お客さんも知らない秘密がいくつも仕込まれていた。

      • 味蕾が目を覚ますような、コーヒー、パン、チーズケーキ

コーヒーは、エスプレッソ主流のコーヒーが多いけれど、ここではやっぱり「水出し」。一秒に一滴だけ垂らして、何時間もかけて抽出する。加熱して出せば効率も良いのだけれど、苦味やエグ味が強くなる。

コーヒーや紅茶に入れられる砂糖も、キビ糖で作った角砂糖が用意されている。甘さだけを抽出した白砂糖ではなく、天然の栄養も含まれる、キビ糖にしたかった。キビ糖にすると、白砂糖よりも水分を吸ってしまい、すぐ固まってしまう。そこで、角砂糖にした。けれど、コーヒーの味がしなくなるような大量の砂糖も入れたくなかった。そうして、最後に残ったのが1gのキビ糖でできた角砂糖だという。普通のコーヒーよりも、むしろ少し酸っぱいような、そんな感覚のコーヒーは、香り高く、途中で水で嚥下することなく、楽しめた。

軽食のメニューも、ほぼ全て、店内で調理する。グルテン豊富な強力粉からマフィンを作り、そのマフィンに挟むのは、わざわざフライパンで焼いたポテトサラダ。2層のゼリーからできたデザート。手を抜かない。そんな姿勢があった。

中でも、チーズケーキは衝撃だった。少し酸っぱいような、きちんとしたチーズの味がした。甘さだけではなく、少し酸っぱい感じが、味蕾を刺激するのだという。これに比べれば、普段食べていたチーズケーキは、クルミドのチーズケーキの残り香だけに、砂糖を大量に混ぜたような、感覚がする。

お菓子を作るとき、普通、大量に砂糖を入れる。クルミドのデザートは、そんなに砂糖を入れなくても、楽しめるんだよ、と語りかけるかのようだった。舌が感覚を、取り戻すような感じがした。帰りにコンビニに寄ったけれど、なんだか、何も買う気になれなかった。

店内で調理していないもの、天然酵母パンや、コーヒー豆や、アイスクリームも、アルバイト含むスタッフ全員が工場に見学に行き、「手間をかけて、嘘のない、本当のもの」を使っている事をその目でみているのだという。だから、後ろめたさの、ない店なのだという。顧客に対して。もちろん、娘に対して。

  • 場所が語りかけてくる

内装にも、途方も無い手間ひまが、掛かっている。

一枚一枚、みんなで張ったという味のある床。「盛り加工」ではなく、珪藻土を用いたという厚みのある壁。樹齢300年、一枚板から切り出された味わい深いテーブル。そのテーブルに「ご自由にどうぞ」と置かれているクルミ。キノコの形をした、可愛らしいくるみ割り機。そのテーブルと床を見下ろす、くるみ割り人形。低くしつらえられた電球と、一滴一滴、コーヒーを抽出していく水出し機と、そのガラス玉の輝くような。

背筋が、伸びるような感覚があった。

    • 地域と共に、子供と共に

でも、なぜ「西国分寺くんだり」にあるのだろう。もともと、クルミドコーヒーのある場所は、影山店主の生家だったのだという。そこを、「マージュ西国分寺」という集合住宅に作り替えて、その一階にクルミドはある。子供のためのクルミドが、地域を繋ぐ。

クルミドでは、子供たちに、「マージュ」という地域通貨を報酬に、お手伝いをしてもらうのだという。スタンプを押して貰う仕事や、店の前の落ち葉を集めて、綺麗にしてもらう仕事。

でも、その仕事の評価には、手を抜かないのだという。いい仕事をしてもらって、だから報酬が出せる。ひとの役にたったから、「100マージュ」がもらえる。こんなところにも、子供だからといって、手を抜くのではない。こどものための、本物があった。

  • 惜しみない一手間が、現実と物語を交差させる。

現実の時間に人が、一手間一手間をかけると、そこから物語の、時間が流れはじめた。知覚できないけれど、言葉にできないけれど、感ぜられる何かは、確かにそこにある。意識にはのぼらないのだけれど、スタッフ総出で油を塗って、タッカーで留めた壁材には、色の差、木の味、無数に開いた穴があって、それらは無口ながら、たぶん雄弁に語っている。

  • Nothing but perfect

およそ目にする、およそ口にする、およそ手にする、すべてに物語があった。クルミドコーヒーという物語はそしてこれからも紡がれる。ここで書いた以上に、紹介しきれない秘密が込められている。

それはそうだ。大人がまるで、子供のように、本気で作った秘密基地。筆舌に尽くしがたい。感得するよりない。

影山さん、お時間取っていただき(しかも、2時間のお約束だったのに4時間も!)ありがとうございました!
クルミドコーヒーへは、こちらから。
影山店主のブログはこちらから。

未来の働きかた、について[日々][思惟]/237110

  • Stanford GIT

Stanford大学が、今日本でも行われている『Global Entrepreneurship Week』の中の1イベントとして開催している、Global Innovation Tournament(GIT)というイベントがあります。

世界中の学生が、発表される「世界共通の課題」に取り組み、思考し、試し、その結果を3分程度の動画にまとめ、YouTubeにアップロードする、というイベントがありました。

「世界共通の課題」というのは、例えば去年は捨てられている「ペットボトル」をどうするか。というお題で、今年度は、「Make Saving Money FUN!(楽しく貯金してごらん☆)」がお題。現在の不況を反映したテーマです。

この課題が11月5日に発表され、11月13日・日本時間17時に回答(YouTubeへのアップロード)締切という、中々にタイトなスケジュールなのですが、今回、このStanfordGITに参加し、即席のチームを作り、協働する事ができました。

結果として、以下のような動画を提出できました。



素晴らしいメンバーに恵まれて、希有な体験ができたのですが、今回はそこから見えてきた(気がする)未来の働き方について考えを巡らせます。主に、「チームをつくる」という視点からの示唆を出します。

尚、ダニエル・ピンクの「ハイ・コンセプト」は読みましたが、「フリーエージェント化社会の到来」は未読ですので、あとで「答え合わせ」をしてみたいと考えています。

  • 短期のプロジェクトベースで、エネルギーを一気呵成、燃やし尽くす

今回、11月5日課題発表。11月13日・日本時間17時までに回答という、中々にタイトなスケジュールだったのですが、私が参加を決意し、メンバー候補に連絡を取り、出ないか!?とメンバーを誘い、そうして、5人のメンバーが揃ったのが、締切り21時間前の11月12日20時でした(笑)

そこから、終電までの3時間、超楽しくディスカッション/ブレインストーミングし、アイディアをひねり出しました。真面目と不真面目が融合した、楽しい空間でした。

  • Leverage Diversity and Capacity

そして
「SAVE Moneyって言うけど、SAVEって色々解釈できるよね、Social and Venture Entrepreneurとかw」
「じゃあ、S・A・V・Eそれぞれどんな解釈できるか考えようぜ!」
「V…バイオ? 」
「それ、VじゃなくてBだよww VだとSONY製品だなw」
みたいな場の暖めがあって、

「100万貯まって彼女できるなら、絶対おれ貯金するんだけどw」
みたいな『不謹慎』発言に、今回の火種が燻って、
「じゃあどうやって女の子と会わせるんだよw」みたいな所から、
「100万貯めてカレシが欲しい女の子とマッチングさせればいいんじゃん?」
といったアイディアに飛び火。

そして、ここから、

    • 貯金の目的(夢)と貯金の目標額とをまずは明確にしよう。
    • その夢に沿った、動機づけを、貯金するたびに行う。
    • 目標額を達成したら、そのお金をどう使えば夢が実現しうるか、サポートが受けられる。

→夢の実現を応援する、【Concierge Bank】を!

あれ、じゃあ銀行のメリットって?

    • 「定期預金」ならぬ「定額預金」。100万貯めます!って言ったら、100万貯める前に解約すると定期の解約みたいに手数料を
    • ユーザの行動データ・嗜好データの収集→マーケティングに
    • コンシェルジュサービスで、サービスの執行まで行って、マージンを取る(cf.海外旅行したいという夢に対し、旅行ツアーやパッケージを選別執行。10%採るとか。)

3時間でこんな風な「面白い」展開が起きたのは、こんな参加者が集まったからじゃないだろうか:

・空気読まない
・けど、人の発言を拾う/乗っかる
・揶揄する。でも馬鹿にしない。
・真面目にふまじめ
・バックグラウンドが、文理も、嗜好も、学年もバラバラ

こんな、優秀で、だけどバラバラな人、自分と違う人を集めること。
もしかしたら、合わないかもしれない人同士を繋げること。

こんな事が上手くいったのかもしれません。「誰をバスに乗せるか」が驚くほど上手くいった。

  • 時間を・人脈を「出し合う」

「急造」のチームですから、当然、予定が合わない人が出てきます。翌日・最終日は参加できないメンバーも居ましたし、昼から授業に向かったメンバーも居ます。そして、昼だけ動画に出たり手伝ってくれた新しいメンバーや、朝から動画編集に加わってくれたメンバーが居ます。

この日、必要な人を、数時間だけ、借りてくる。そんなイメージです。僕がこれまで知らなかった人とも出会えたし、そういう人たちと一緒に何かやれたのが愉しかった。

  • イメージ/やりたいコトを共有する。信じて任せる。確認する。目指せ、8割クオリティ。

新しい人に、昨日からのメンバーに、「イメージ」を共有します。締切まで、7時間。

・僕らは、何がしたいのか。メッセージは何か。
・そのメッセージを、どんな流れで表現するか
・各々にやってもらいたいことは、どんなことか。
・作業をパラレルで回す。チーム分け。

ここのシェアを疎かにすると、絶対に上手くいかない、と思います。何か道筋を引く事で、むしろそこから離陸する、新しいアイディアを誘発できます。この初めのイメージ、を前提に、プラスアルファ。

  • Commitment and "Complete Work":フルコミットする人が「全部」できることが大切

仕事にはかならず「完結性」が必要です。実は僕は、パワーポイントをいじるのも、画像を創るのも、ビデオを撮るのも、動画編集も、(クオリティは全てがそんなに高いわけではありませんが)、できます。

動画編集をしてくれた友人(集合8時間前の深夜にアポを取られた(笑))は、14時まで時間と力を貸してくれ、その後、当初の用事をこなしに。

この時、いくらそこまでのクオリティが高くとも、尻切れトンボでは、「完結した仕事」にはならないと考えます。それは単なる動画クリップの残骸であり、公開した所で、視聴者に何の貢献もできない。だから僕に、ここまでの素晴らしさを、「完結」に向けドライブする責任がある。
クオリティは低くとも、一度最後まで作ってあり、メッセージが届けば、それは「完結した仕事」になる。最初から最後まで、全員がコミット出来るわけではない時、特に「特殊技能」に長けた者がフルコミット出来ない場合、それが抜けた時に「完結性」をどう賄うか、という事を考えるのが恐らく、プロジェクトの成否を決めます。

  • 「楽しい体験」が次回のメンバーを創る。

今回コミットしてくれたメンバーは、楽しそうでした。実際に「こんな働き方味わったら就活やめたくなったわw」みたいな声もありました。ギリギリの、時間に制約された状況下で、各人が持てるリソースを出し合って頭を絞り、何かアウトプットを出そうとする様は、分配ゲームの要素は入りようがありません。パイの分け方を考えていたら、パイが焼き上がらないのは自明ですから。そして、みんなで、短時間で、質の高いパイを焼こうぜ!と頑張るのは、やっぱり楽しい事だった。

そして、今回、このプロジェクトで「たのしい!」と思ってくれた人は、次回の僕の「ねえねえ、今日の夜ひま? 実はさ…」という怪しげな誘いに、きっと乗ってくれることでしょう。ちょっとした用事ならカットしてでも。この楽しさの蓄積が、きっと次回のメンバー集めの成否を分けるのだ、と思います。

  • 明日の働き方にしては足りないところ

以上は、今回あった「良い事」だけを書きましたが、実際には、現在のアウトプットでは「食え」ません。僕は実際、こういうプロジェクトベースで、創造的で、楽しい働き方をしたいな、と思うのですが、僕自身も、周りの友人も、100倍くらいパワーアップすれば、こういう事をやって、そしてそれで食っていけるのでしょうか。

  • 明日の夢と、今日のパン

そして、こういう仕事(というか)の仕方は、実のところ、継続性に欠きます。例えばイノベーティブなサービスを考えて、創ったとして、それを日々運営する人が居なくては、成り立ちません。

ここで、こんな本の一節を、思い出します。

『お互いに「今日のパン」チームと「明日の夢」チームを時々乗り換えながら進もうぜ』と。大切なことはお互いのエールの交換。とりわけ「明日の夢」を追う人達は、「今日のパン」チームに対する感謝の心を忘れてはいけない。その心があれば、新規事業は正しく会社の期待になる。
P162/生嶋誠士郎「暗い奴は暗く生きろ」(新風舍 2007)


今日のパンを噛みしめつつ、それでも僕は、明日の夢追い人で居たいと、そう考えるわけであります。


ちなみに、他の日本人チームの動画は以下です。