最新脳科学が教える 高校生の勉強法
という本を読んだ。以下そのエッセンスを箇条書きにて述べる。

・短期記憶と長期記憶

短期記憶→顕在意識
長期記憶→潜在意識



・長期記憶と海馬
海馬は絶えず情報の消去を行っている。
海馬の「審査」に通ると短期記憶は晴れて長期記憶となる。審査期間は約1月。
海馬の審査基準は「生きていく為に不可欠かどうか」。
反復によって海馬を騙す:短期間に何度も同じ情報が来るのだから“重要”


・記憶について
意味を持たない文字や数字の記憶は、覚えた直後が最も忘れやすい。
新しい記憶が追加されると、短期記憶の忘却が早まる(記憶の干渉)
 ←一日のうちに新しい知識を沢山詰め込むのは避ける。予習より復習。
記憶を繰り返すと、あたかも記憶力が上がって感じられる。
 ←短期記憶を忘れても「無意識の記憶」が二度目三度目の記憶を助ける。
  ←但し、潜在的な記憶の保存期間は一ヶ月=一ヶ月以内に最初の復習を!


・復習について
海馬の性質から、もっとも効果的な復習のプランは
 学習した翌日に一度目
 その一週間後に二度目
 その二週間後に三度目
 その一ヶ月後に四度目
   これ以上復習する必要は無い。
復習の効果は同じ内容のものに対して生じる。同じ参考書を継続して使え。


・睡眠と記憶
6時間以上の睡眠をとれ。夢は記憶の「再生」
睡眠中に海馬が情報を整理し選択する。
覚えられる範囲、理解できる範囲だけを覚えたら、潔く寝る。
学習したものが時間を経て「熟成」されるのも夢の効果。「Reminiscence」


・できるだけ効率よく記憶したい
(とはいえ、復習もせずに何かを習得しようというのは間違っている。)
好奇心によって「シータ波」を出す:興味を持つと少ない復習回数で記憶可能。
 ←つまらないと思っていると意味がない。飽きたら少し休憩して再トライを。
扁桃体:感情の工場;を働かせると記憶しやすい。感情を絡めて覚えよう。
記憶力はストレスによって低下する。
適度な緊張感を持ちつつ、興味と感情を活用して勉強しよう。


・人間だって生物さ
危機的状況に記憶力が増強される。
空腹という危機的状況:夕食後より夕食前に、勉強しよう。
寒いという危機的状況:部屋の温度は若干低くする。頭寒足熱。


・脳の進化から見る記憶
学習=物事の関連に気づく事。
記憶は失敗と反復で形成、強化される。
脳の記憶は消去法。
学習には失敗しても挫けない根気と解決能力と楽観性が重要。
スモール・ステップ法:手順を分解して学習するとよい。
 ←小さな目標を持って漸進せよ。手順を踏んで積み上げよ。


・全体から部分へ:曖昧な脳
大局的な流れをつかんでから、部分の学習を。
得意科目を伸ばそう
 ←ある分野で「細かい部分」の習得が終われば、別の分野のそれが早くなる。
  ←「部分の理解の仕方」の記憶が、他分野の「理解の仕方」を上達させる。
一つの科目に集中し、まずはそれを極めよ。



・記憶の種類と方法
経験記憶:自由に思い出せる自分の過去の経験が絡まった記憶。「What is」
知識記憶:想起に何らかのきっかけを要する知識の記憶。「What is」
方法記憶:手順ややり方、歩き方、自転車の乗り方。「How to」

中学生くらいまでは知識記憶が優勢であるが、高校生以降は経験記憶が優勢となる。
経験記憶は(高校生以降では)、覚えるのが楽で忘れにくい。
経験記憶:物事を理解してその理屈を覚えるという事。
手軽に経験記憶を作るには、覚えたい情報を説明してみること。
但し、経験記憶も使わずにいると次第に知識記憶に置き換えられる。
方法記憶は実践によってのみ、無意識に自然に身につく記憶で、忘れにくく強固
力関係は
 経験→知識→方法
(発展)→→→→(原始)
であり、方法記憶など下の階層は生命の維持に重要。上の階層は高度に発展した内容。


・想像力:連合と精緻化
ある知識を他の内容と結び付けることを連合という。単純な知識記憶も「連合」で経験記憶に近づく。
連合を次々に作ることを「精緻化」という。精緻化すると思い出しやすくなる。
 ←一つの事を記憶するにも、できるだけ多くを連合させよう。
  ←丸暗記でなく、例文や用法、語源などを一緒に覚えようとする。
   ←また、丸暗記は応用力に欠ける。
想像は「精緻化」と「海馬の活性化」を同時に行う。


・身体を使った学習
目より耳を使った学習の方が、効率がいい。
 ←視覚より聴覚の方が、発達が古い=脳のより根本に根付く。
  ←文章より歌詞が覚えやすい。
手を動かして紙に書き、声に出して喋りながら記憶せよ。
チェックシートは視覚だけに頼っているので要点の再チェックに。


・方法記憶=魔法の記憶
方法記憶はいつでも勝手に働いている。
ある分野をマスターするには、その分野の「理解する【方法】」の習得が必須。
天才を作るのは方法記憶。
方法記憶を使えば、その理論が根底にある全ての物事に応用可能。
記憶した量に意味はない。その応用方法を記憶する事が重要。


AをマスターすればAとAの習熟方法の二つを記憶する。
それが、次のBと、Bの習熟方法に影響を与える(学習の転移)
 →学習の転移は「べき乗効果」
従って、学習の効果は、ある時突然現れる。
2^5 = 32
2^10 = 1024.
半分の「時間」では、1/10の「道のり」にも到達しない。だから継続を大切にせよ。
夏休みの勉強の効果が出てくるのは、早くて秋以降。

これを読んでも、それをそのとおり自分自身で実行可能な高校生は少ないだろう、なあー。