答えるに値する問いをつくる。/251372

現在、友人たちと新(ウェブ…になるのかな?)サービスのリリースを計画しています。それは、「僕が、イキイキと生きるには?」という聊か漠とした問いから、あるいは、「ちょっとしたミニワーク・ミニプロジェクトを支援するにはどうしたらいいんだろう」という問いから、生まれたものでした。

これまで、机上でディスカッションを何度となく重ね、エンジニアの仲間がエレガントなシステムを、デザイナーの仲間が明るくポップなデザインを行い、後は細部を詰めて、リリースするだけ、という所に至りました。

しかし、作ったサービスは、頭の中で思いついた時は上手くいきそうに思ったのですが、実際にモノが出来て、自分達で使ってみると、企画者の、発案者の、プログラマの、デザイナの、自分達ですら、「すぐ使わなくなる」事があきらかになりました。

そこで、描いていた理想を、取ろうとしていた手段を、もう一度問い直すべく、私たちは「人の声」に示唆を求め始めました。

「人が何かを【やれる】」とは、どういう事で、どういう時に可能なんだろう、という問いだけは胸に、人に興味を持って、12人のインタビュー協力者から、一人2時間以上も貰って、話を聞き続けました。興味と疑問に、率直に答えて貰いました。

今日のエントリは、その12人の人生から知恵を得たプロセスを、ご紹介したいと思います。以前 http://d.hatena.ne.jp/starbow/20090920/1253458969 で触れた、IDEOの手法を下敷きに、くらたまなぶの教えと、自分達の方法論を上乗せした。そんなプロセスです。

  • 前提確認・目的/流れの共有(30min)

プロジェクト全体の目的の中での、今回の会議の目的

宣言と応援によって、個人プロジェクトを支援するというコンセプトの元、作成したウェブサービスは、メンバーである我々自身にとっても、使いづらく、また、使わないものになってしまった。そこで、理想やコンセプトを取っ払い、ゼロベースで「顧客の声」を聞き、人というものを知ろうと、トータル12人の深いヒアリングを行った。
本会議では、このヒアリングで得られたデータを基に、声を聞いた他者を自分たちに「憑かせる」事を通じて、我々が取り組むべき使命を鮮やかに描き、サービスの核となるべきコンセプトを設定し、そこから、実現可能性と採算性を意識したサービス設計を行う。

と、

ゴール

各自が理想に感じる使命を発見し
意味あるサービスコンセプトを発明し
具体的なサービス設計が行えていること

を設定/共有し、
本日、どのような意図で、どのように会議を進めていくかを共有しました。

ちなみに、実際にかかった時間は以下の通り:

1. 前提確認・目的/流れの共有(30min)
2. 個々人が持つ情報の共有(200min)
3. 洞察と昼食休憩(100min)
4. テーマ出し(120min)
休憩(20min)
5. テーマの整理と構造化(90min)
休憩(20min)
6. コンセプト(90min)
休憩(20min)
7. コンセプトの説明と投票(40min)
休憩(20min)
8. 解決策のブレインストーミング(30min)

  • 個々人が持つ情報の共有(200min)

共有―Downloadと呼ばれるこのセクションでは、情報というよりも、インタビューに応えてくれた「人」についてのイメージを共有する、もっと言うならば、「自分の中に、インタビュイーをつくる」のが目的です。

今回は、インタビューのログを基に、インタビューをした人が、インタビュイーについて、どのような人で、どのような気持ちでどのような行動をとったか、という教えて貰った「ストーリー」を話し、聴き手がその人の事を「頭と心に入れ」ながら、ポストイットにその内容をメモする、というような形で進めました。

この時、「女子大3年生」「〜〜で優勝・MVP」と言った、事実レベル・属性レベルの記述は全く役に立たず、「事実+行動」「事実+気持ち」「行動+気持ち」といった、要素が組み合わさった記述が以降の洞察やテーマ決め、アイディア出しに有用でした。

例えば、
「応援してくれる人が居たから、頑張れた」「優勝したら、自分の事を認めてくれる人が増えて、嬉しかった」「学内の新聞に載ったけれど、それだけでは満たされなかった」「むしろ子供と触れ合い認められる方が、受け入れられている気がした」
といった記述形式が、後の示唆出しに役立ちました。

予想外に、あるいは予想以上に時間がかかってしまったのがここですが、よく考えれば、インタビューログだけで40000文字もあるログを、そう簡単にシェアできるわけがなかったですね。

  • 洞察と昼食休憩(100min)

洞察―Insightと呼ばれるこのセクションでは、前述のポストイットを基に「洞察=新規性・驚きのある事実の仮説」を出していきます。今回はまずは、インタビュイー12人を、一人づつの中で洞察を出していきました。

この時重要なのは、それが「仮【説】」であるという事です。「家庭環境」「達成欲がある」といった書き方、いわばラベルを貼るような書き方では不十分(「説」でない)で、「自分に似たマイナス部分を持つ人に惹かれる(のでは?)」「決断に際し、外部の価値観を重要視している(のでは?)」というレベル感での「洞察」を出していきます。

出し終わったら一度、各人が出した洞察の発表と説明を参加者全員に行い、どのような洞察がここまでで出たのか、情報を共有します。

  • テーマ出し(120min)

次に、先程の洞察をより一般化した、「テーマ」を出します。今回は、インタビュイー12人の複数人に跨って出せるテーマを出していきました。これも、仮「説」になります。

例えば、「何かが「ない」から頑張れるという事があるのではないか=愛や評価を取り戻すために頑張るのでは?」「人に与えたい、他人の夢を支援したいという気持ちがある(のでは?)」「セーフティネットがあるから、チャレンジできる」といったものです。現実には、前段階での「洞察」と同時に行っても問題はありません(特に、複数人を直接インタビューした人は、始めから複数人の繋がりが見えていたりしますよね)。

  • テーマの整理と構造化(90min)

ここで、多くのテーマが出たので、出たテーマをPost-itに書きうつし、テーマだけを眺めながら構造化・整理を行いました。

人の行動には、自分の内から出るもの、外部からの要求に応えるもの、それらが重なるもの、といった、より大きなフレームを設定して、出てきたテーマを整理する事ができました。

ちなみに、この辺りで疲れも限界に達し、また、テーマが抽象的すぎて(ここと前段階が元々、このプロセスで一番抽象的になる所です)、纏まるのか?という不安がメンバーの頭を巡り、もうちょっと心が弱ければここでお開き・解散にしていました(笑)


  • コンセプト(90min)

ここでは、これまで挙げた、洞察とテーマに対し「機会領域」を探ります。いくら哲学的にあるいはマーケティング的に素晴らしい洞察を出しても、それが実現可能なものでなければ意味がありません。そこで「いかにして我々は、〜〜〜をするか」という問いを、ここで幾つも立てる事を目標とします。

出てきて、整理されたテーマを見返しながら「いかにして我々は〜(How Might We...)」という問いを、幾つも作っていきました。例えば、「外部のノイズ・社会の要求や流れについ載ってしまう」というテーマと、その下に貼られた洞察、そしてそれを裏付ける事実を眺めながら「いかにして外部の価値観を明確にするか?」という問いを立てました。

  • コンセプトの説明と投票(40min)

これらを各人が出して、ポストイットに書いて貼った後、各人が自分の出した問いの背景を説明します。例えば「いかにして外部の価値観を明確にするか?」という問いであれば、

「外部の要求、価値観、見栄、レール、期待に沿って、つい動いてしまう人は多い。しかし、そう動く人は必ずしも外部の価値観を適切に理解しているとは限らない。例えばサークルで「凄い先輩」みたいに後輩に祭り上げられてしまった人が、『先輩なら凄い所に就職できそうですよね!楽しみです!!』みたいな声に押されて、世間的に『もの凄い』所に行けなければ、本当はちょっと行きたいと思っていた『世間的には凄くない』会社に行くパスを自ら閉じ、極端に走る―例えば「行きたいと思っていないのに」起業やベンチャー―事があり得るのではないか(自分が本当に行きたいと思ってベンチャーや起業を選ぶというのとは違う、いわば消極的な起業/ベンチャー)。しかしその時、例えば後輩はそんな事を期待していただろうか。後輩の言う「凄い」は、先輩にとって明確だっただろうか。いわば「読み合い」のような所があって、答えなくても良かった期待に、答えていて不幸になると言う事があるのではないか。」

という背景を持つ「問い」であるわけです。
出てきた数十の問いに対し、一つづつ説明を加え、背景を共有します。

そのうえで、今回は投票という形で、一人一問5点づつ持って、「今日考えたい問い」を選びました。

  • 解決策のブレインストーミング(30min)

今回選ばれた問いは二つ。

    • 「いかにして与えたいものを与えられる環境をつくるか」
    • 「いかにして外部の要求に対して、自己の魂を載せる事ができるか」

これらについて、15分づつ、ブレインストーミングを行いました。
前者からはさらに、「体験が体験を創る」=「何かがある事で、素敵な体験をした誰かが、その何かを伝える事で、別の誰かにも素敵な体験をして貰いたい」という事が「与えたい」動機ではないか。という仮説が。

後者からはさらに、「外部の要求というのは手段/現象レベルのもので、それは往々にしてつまらない。魂を載せられない。」「しかし、目的レベルまで戻れば、誰もが同意できる何かがある事が多いのではないか。」「そのレベルにまで戻った上で、その目的達成のために動く事ができれば仕事に魂を載せうるのではないか」という仮説、また、魂が載っているというのは、「必ずしも信じ切っている事ではなく、一度疑った(=目的レベルに戻った・目的を問い直した)自信があるものではないか」という仮説を出す事ができました。

サービス等の詳細については、リリースを以て、お知らせしたいと思います★