クルミドコーヒーに行ってきた! /240684

及部君の紹介で、クルミドコーヒーに、学生8人で押しかけて(!)店主・影山さんのお話を聞きつつ、クルミドコーヒーの、コーヒー・軽食・デザートを楽しませて頂きました。

  • クルミドコーヒーって?

このカフェをボクらの娘たちのために作ろうと思う。
ボクらの娘が、もう少し大きくなって
楽しめるカフェを作ってみたくなりました。
たとえ潰れても、やってよかったと思えるカフェ。
わたしの街にも、こんなカフェがあればいいと思えるものにしたい。
こどものカフェといってもテーマパークや幼稚園や、
おまけをくれるカフェではない。
大人もこどもも、お年寄りも、静かでくつろげるカフェ
こどもをとりこめば大人がついてくるというのではない
本当のこどものカフェを、
愛娘のために作ろう

JR西国分寺駅南口を出て徒歩1分。
見えてくるのは、クルミドコーヒーとはためく旗。
「愛娘のための」喫茶店がここにあった。


今回は、2歳の娘が居るという影山店主に、お話を伺った。

  • お父さんが、本気を出して夢を追いかけたらこうなる

元マッキンゼーのコンサルタントで、ベンチャーキャピタリストな店主・影山さんはだけど、お話の最中、ずっと、父親か、秘密基地を作る少年のような面持ちだった。
父親が娘を「効率的に育成」したりはしないように、愛情と手間暇をかけて、お店とコーヒーを作っているみたいだった。
少年が自分の秘密基地を、最高の場所に仕立てるように、「普段はこんなに説明しないんだけどね」という、お客さんも知らない秘密がいくつも仕込まれていた。

      • 味蕾が目を覚ますような、コーヒー、パン、チーズケーキ

コーヒーは、エスプレッソ主流のコーヒーが多いけれど、ここではやっぱり「水出し」。一秒に一滴だけ垂らして、何時間もかけて抽出する。加熱して出せば効率も良いのだけれど、苦味やエグ味が強くなる。

コーヒーや紅茶に入れられる砂糖も、キビ糖で作った角砂糖が用意されている。甘さだけを抽出した白砂糖ではなく、天然の栄養も含まれる、キビ糖にしたかった。キビ糖にすると、白砂糖よりも水分を吸ってしまい、すぐ固まってしまう。そこで、角砂糖にした。けれど、コーヒーの味がしなくなるような大量の砂糖も入れたくなかった。そうして、最後に残ったのが1gのキビ糖でできた角砂糖だという。普通のコーヒーよりも、むしろ少し酸っぱいような、そんな感覚のコーヒーは、香り高く、途中で水で嚥下することなく、楽しめた。

軽食のメニューも、ほぼ全て、店内で調理する。グルテン豊富な強力粉からマフィンを作り、そのマフィンに挟むのは、わざわざフライパンで焼いたポテトサラダ。2層のゼリーからできたデザート。手を抜かない。そんな姿勢があった。

中でも、チーズケーキは衝撃だった。少し酸っぱいような、きちんとしたチーズの味がした。甘さだけではなく、少し酸っぱい感じが、味蕾を刺激するのだという。これに比べれば、普段食べていたチーズケーキは、クルミドのチーズケーキの残り香だけに、砂糖を大量に混ぜたような、感覚がする。

お菓子を作るとき、普通、大量に砂糖を入れる。クルミドのデザートは、そんなに砂糖を入れなくても、楽しめるんだよ、と語りかけるかのようだった。舌が感覚を、取り戻すような感じがした。帰りにコンビニに寄ったけれど、なんだか、何も買う気になれなかった。

店内で調理していないもの、天然酵母パンや、コーヒー豆や、アイスクリームも、アルバイト含むスタッフ全員が工場に見学に行き、「手間をかけて、嘘のない、本当のもの」を使っている事をその目でみているのだという。だから、後ろめたさの、ない店なのだという。顧客に対して。もちろん、娘に対して。

  • 場所が語りかけてくる

内装にも、途方も無い手間ひまが、掛かっている。

一枚一枚、みんなで張ったという味のある床。「盛り加工」ではなく、珪藻土を用いたという厚みのある壁。樹齢300年、一枚板から切り出された味わい深いテーブル。そのテーブルに「ご自由にどうぞ」と置かれているクルミ。キノコの形をした、可愛らしいくるみ割り機。そのテーブルと床を見下ろす、くるみ割り人形。低くしつらえられた電球と、一滴一滴、コーヒーを抽出していく水出し機と、そのガラス玉の輝くような。

背筋が、伸びるような感覚があった。

    • 地域と共に、子供と共に

でも、なぜ「西国分寺くんだり」にあるのだろう。もともと、クルミドコーヒーのある場所は、影山店主の生家だったのだという。そこを、「マージュ西国分寺」という集合住宅に作り替えて、その一階にクルミドはある。子供のためのクルミドが、地域を繋ぐ。

クルミドでは、子供たちに、「マージュ」という地域通貨を報酬に、お手伝いをしてもらうのだという。スタンプを押して貰う仕事や、店の前の落ち葉を集めて、綺麗にしてもらう仕事。

でも、その仕事の評価には、手を抜かないのだという。いい仕事をしてもらって、だから報酬が出せる。ひとの役にたったから、「100マージュ」がもらえる。こんなところにも、子供だからといって、手を抜くのではない。こどものための、本物があった。

  • 惜しみない一手間が、現実と物語を交差させる。

現実の時間に人が、一手間一手間をかけると、そこから物語の、時間が流れはじめた。知覚できないけれど、言葉にできないけれど、感ぜられる何かは、確かにそこにある。意識にはのぼらないのだけれど、スタッフ総出で油を塗って、タッカーで留めた壁材には、色の差、木の味、無数に開いた穴があって、それらは無口ながら、たぶん雄弁に語っている。

  • Nothing but perfect

およそ目にする、およそ口にする、およそ手にする、すべてに物語があった。クルミドコーヒーという物語はそしてこれからも紡がれる。ここで書いた以上に、紹介しきれない秘密が込められている。

それはそうだ。大人がまるで、子供のように、本気で作った秘密基地。筆舌に尽くしがたい。感得するよりない。

影山さん、お時間取っていただき(しかも、2時間のお約束だったのに4時間も!)ありがとうございました!
クルミドコーヒーへは、こちらから。
影山店主のブログはこちらから。