テンセグリティの設計と実践。/99503

今回は、3本の柱と針金を用いて、下図のような、テンセグリティ・ライトを作ってみた。




テンセグリティとは、テンション(張力)+インテグリティ(統合)の造語で、今回のようなものであれば、3つのステンレス柱が、下図のように、針金で支えられて自立するようなものを言う。三本のパイプを、上3箇所、下3箇所を下図の赤いラインのように結んでやると、三辺が広がっていく方向には行かない。そして、3本がねじってある場合、それらは上下に引っ張られたとき、三辺が狭まっていく方向に行く事になるから、下図の青い線によって、上下方向の移動を制限してやる。すると、自立する。



では、これを設計するには、どうしたらいいのだろう?


いま、真上から見た図は上下対称として、以下のような図になるはずだ。下図の赤いラインがパイプである。



これを、辺Lを含む面に垂直になるように、つまり、LOOKと書いてある矢印の方向から見ると、以下のような図になるはずだ。


 



すると、記号を以上のようにあてはめると、


・頂点同士を結ぶ紐の長さm


・パイプの長さℓとその傾きθ (あるいは、hとuの長さの組)


の3つのパラメータを決めてやれば、このテンセグリティ構造体は、一意に決まるはずだ。


 



そういうわけで、以下のようにしてmを求める。




加法定理か、あるいはヘロンの公式を使えば、二辺とその挟角が決まっている三角形のもう一片の長さが出るから(なお、長さが負の値になるわけが無いので、±を統合して以上のようなcosφになっている。)


以上から、 棒の長さとその角度(あるいはhとuの組)及び、Lを任意に決めることができるので、以下のようなパラメーターで設計する事にした。


設計


まず、真上から見たときに、半径Lの正三角形が見えて、その内部にパイプは行かないはずだから、半径Lの三角柱を作ろう。こういう作る為の助けになる器具を「治具」という。



 


治具を用いて作っていくさま。なお、治具の真ん中にセロハンテープで輪ゴムを固定し、そこにパイプを通した。


それによって、角度の自由さを設計の途中段階では失う事がない上に、手が自由になる。



このように作って、上下3本づつ、上と下を繋ぐのを3本と作って、治具を取ったところ、捻じれによって、ゆるゆるになってしまった。


そこで、ねじれないように下図の緑の部分も針金で繋いでやった。




(造りなおしバージョン)途中経過


 


なお、パイプを倒す方向は、右回り・左回りで下図のように二通りある。



スネルソンのNeedle Tower IIなんかは、この左右が逆のものを交互に積み上げて作っている。


これだけ作ってもなんだかアレだけれど、自分で作っただけあって、工業製品と違うから、どうも上面が水平にならない。



そこで、以下のようにライトを入れて、テンセグリティ・ライトを作ってみる事にした。(ちなみに、針金ではなく伸縮性のあるバネなんかでやるともっと上手く行くようだ)



 


 


各辺の長さをコンパスで計り、和紙を切り取って、貼り付ける。下図は三枚貼り付けたところ。





 


6枚貼り付けて、完成!



なかなかムーディーでは、ないでしょうか?(笑)


 


多分、今回使った数学って、高校程度のものだと思うのですが、ちゃんと数学を勉強しなおしておいてよかったなあ、と思った日でした。


設計という机上の空論だけでは上手くいかない事も多いのですが、机上の空論が打てない事には、どうにも方針が立ちません。


 



ちなみにこのテンセグリティ、授業でテンセグリティっていうのがあるよー、こういうものだよー、と習ったあとで「さあ、2〜3時間で、水入りペットボトル1本をぶら下げても耐えるような、テンセグリティ・ブリッジを作ってみろ!」と出された課題なんです。もちろん設計方法なんて教えてくれません。



その時はこんな複雑な設計をしている暇は無かったので、「L(上からみた時の開き)→0」にして、立方体のxyz軸に相当する3つ、という思想(下図)で設計をしました。




下は僕が授業中に作ったテンセグリティ・ブリッジが3本の水入りペットボトル(計1.5kg)に耐える所です。なお、5本まで耐えました。多分どこかの割り箸が折れるまで、耐えられたと思います。