- 幸福とは

 愛が万能薬ではないという事実に鑑み、幸福も万能薬ではなかろう。幸福という感情。あるいは事実。あるいは幻想。あるいは直感の齎す『副作用』はなんであろうか。

 幸福で或る状態は、その幸福を失う事への恐怖や不安を齎す。アニメや漫画では人は「守るべきものがあると強くなる」そうであるが、実際は人間は守るべきものができれば弱くなるのだ。特に守るべきものが自分自身あるいは自分自身に備わった特性や社会的地位である場合は特にそうなる。その事は「保身」という言葉から人々が簡単に想起するであろうイメージからいっても自明である。

 負のエネルギーというのが強力な推進力である事も忘れてはならない。現状に満足してしまった人は向上を進歩を望まないであろう。そうして気がつくと時代からは遠く彼方。幸福である状態はいわゆる「ルサンチンマン」に似たエネルギーを内から消してしまうのではなかろうか。

 とすれば結局、人は幸せを望むが、幸せに安住していれば退歩するのだ。では我々はどうすればよいのだろうか。幸せでありながら前に進むためのエネルギーを得るためにはどうすれば?

 きっとそれには、好奇心ってものが必要なんだろうなあ、と思う。