企業はなんのためにあるのか。

あるいは、企業の目的は利益ではないという話について。

「企業の最終目的は、利益の最大化だ。」と、コンサルタントになった友人が言っていた。「だから、どのようなプロジェクトでも、いかに利益の最大化に繋がるか、から構造化して考えることが大切なのだ」とも。

 

その時はうまく言語化できていなかったのだけれども、ここでは「発想の拡がりについて」「プロジェクトの進め方」「あなたはなんのために生きているのか」という3つの視座から「企業の目的」についてその輪郭を炙り出したい。

 

  • 発想の拡がりについて 

企業の最終目的が利益だとする。企業の未来を創るためにはそこからの構造化が大事であると。そうすると「利益=売上ーコスト」で表される。売上=顧客数×客単価で、コストは固定費+変動費…と、ツリーは構造化される。もちろん、売上=新規顧客数×新規顧客単価+会員数×リピート率×リピート単価、であったり、売上=ライフタイムバリュー×顧客数、であったりというのは、色々に分解できる。こういった分析はとても重要だ。どこに課題があるかを時に、教えてくれる。

だが、ここから出てくるのは、基本的にはそれだけだ。この数式は新しいものは生み出さない。何より開発すべき新製品について、提供すべき新サービスについて、維持すべき顧客の心を掴んでいたサービスについて、何も教えない。採算がとれているかそうでないかは教えるが、不採算だとしてその事業を立て直すべきか、撤退すべきかを教えない。

だから、これだけでは意思決定のための参考情報にすぎない。企業の「目的」を利益に置くとだから、立ち戻る場所が利益であればだから、発想が制約される。

 

  • プロジェクトの進め方について

色んな会社で、色んなプロジェクトの進め方があるのだろう。僕らの会社ではプロジェクトを始めるとき、できるだけ「アウトカム」「ゴール」「アクション」を明確にして(時に仮説ベースであっても)進めることにしている。

アウトカムとは、なぜ、なんのためにそのプロジェクトをやるのか。そのプロジェクトの意義、意味。どうして他でもない私とそのメンバー、共に働くお客様が、貴重な時間を費やしてそのプロジェクトをやるのか。そのプロジェクトがうまくいけば、いったいどんな未来が待っているのか。どんな結果の為にやるのか。それを明確にする。これがプロジェクトメンバーを鼓舞し、視線の先を一にする。

ゴールとは、測定可能な達成目標のこと。いわゆるKPIが何で、その目標値はどこか、ということ。アウトカム実現のためには、最低限このゴールを達成していなければ、というもの。

最後に、アクション。ここがいわゆるプロジェクトで実際に実施する事項。施策。こういうことをやって、ゴールを達成しましょう、という部分。

余談だけれど、プロジェクトのスコープは、インプットが何で、アウトプット(成果物)が何かを決めること。

利益とは、「アウトカム」「ゴール」「アクション」で見ると、企業のKPIであり、ゴールにすぎない。アウトカム、つまり「その企業はなんのためにあるのか」に答えない。目的ではなく、目標にすぎない。

 

  • あなたはなんのために生きているのか

企業は、利益が出なければ潰れてしまう。継続的な企業利益の確保は、存続の条件である。それは確かに現実としてそうなのだと思う。

同じようにあなたは、ご飯を食べなければ死んでしまう。だから、資本主義の世の中では何らかの手段でお金を稼がなくては死んでしまう。お金を得ること、あるいは食べることは生存の条件である。それは確かにそうなのだ。

だが、だからといって、あなたはお金を稼ぐために生きているわけではないし、ただ食べるために(人体に必要な栄養素を摂取するために)生きているわけではない。つまり「死なないために、生きているわけではない。」ゆえに存在の条件は目的ではない。必要条件は十分条件ではない。

人は生きがいを求めるし、働きがいを求める。お腹がいっぱいになることでは満足しない。栄養を身体が必要なだけ摂るのではなく、美味しいこと、温かいこと、見た目にも綺麗なことを求める。

 

 

もちろん、若手のコンサルタントが、思考の取っ掛かりを「利益」そこに求めたくなるのは、わからなくも、ないのだけれど。